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Journal

CIRCULAR WARDROBE ── 循環でつくる、これからのクローゼット

2026年9月、オッフェンがウェアコレクションを発表しました。ただ、アパレルラインを増やしたのではなく「どのように循環を広げるか」に基づき、他社とともにその環を広げるためのプラットフォーム的役割となることを目指しています。ここでは、プロデューサーの日坂さとみが、ウェアコレクションをともに作った方々とのものづくりのとき間を振り返りながら、オッフェンが服や靴を通して目指す世界のことを深掘りします。

 

靴から始まった循環を、服へ

オッフェンはこれまで、「何を作るか」ではなく「余分なものを減らして、どう作るか」から靴作りを始めてきました。
今回ニットウェアの展開をスタートしたのは、シューズだけでなく、その先にある「循環」を広げていきたいという思いからです。単に「サステナブルな服を作りました」ということではなくて、靴から始まった循環が、服へ広がっていく。その考え方でスタートを切りました

ユニリーバとの取り組みをきっかけにスタートした「UMILEヤーン」糸のセーターとニットスカーフをオッフェンのブーツと組み合わせた

リサイクル糸を使ったカーディガンとパンツ

「UMILEヤーン」糸でできたリブニットと組み合わせたのは、廃棄予定だったデニムの再生プロジェクトを手がける山澤亮治さんが収集・選定した、ヴィンテージの「Levi's® 501®」。「片山文三郎商店」の端材から作られたレザーバッグと photographer Josha Helius, special thanks to marcomonde, L'ANGELIQUE

企業さんが抱えている課題に対して、私たちが何か形に変えて解決できるところがあるのなら、という思いで、ユニリーバ・ジャパンさんと、パッケージ変更などで使えなくなった余剰在庫のシャンプーボトルを使ったリサイクル糸で、以前、靴を作らせていただきました。そのときから、この取り組みを継続的なものにするためにどうしたらいいか、何度もミーティングを重ね、結果的に靴ではなく服を作るのがいい、という結論に至ったのです。2023年ごろから3年の月日を経て、やっとお披露目できた形です。

 

実はこの糸には、一つ大きな課題がありました。飲料用のペットボトルからできた糸と違って、最終的な受け皿がまだ小さいのです。だから、私たちが洋服にして販売することで「この糸を使いたい」というアパレルブランドさんが増えていってくれたらいい。そういう一例を作りたかったんです。

 

靴ではなく服を選んだ最大の理由は、日本ですべて完結させたかったからです。靴の場合は、どうしても日本で作った糸を中国に送ることになります。しかし、私たちが目指しているのは、地球に寄り添った持続可能なビジネスを続けることです。この取り組みを継続的なものにするためには、全工程を国内で行わなければならず、そのためにはウェアでないと成立しなかった。私個人としてはアパレル業界で長く服作りに携わってきましたが、小売である私たちが、原材料から糸を作って服にするというのは、なかなかないことだと思います。

photographer Sana Kondo

photographer Sana Kondo

photographer Sana Kondo

これは「アパレルのローンチ」ではありません

ニットだけをポンと出したところでどうなのか、という思いもありました。一つのコーナーとして、継続して展開していく。そう決めたときに、オッフェンが普通のお洋服を作っても仕方がないので、「これを捨てずに、なんとか形にしたい」という同じ思いのある方々の集まりにしたいと思ったんです。

 

特にこだわったのは、原材料と製法でした。残材、廃棄回避由来の糸、古着のデニム。いろいろな素材を、もう一度つなぎ直す。そういう取り組みにしたかった。

 

第1弾でご一緒したのは、この3組です。

 

ユニリーバ・ジャパン株式会社

「プラスチックがごみにならない未来」を掲げ、2020年から〈UMILE(ユーマイル)プログラム〉を展開されています。つめかえ製品の購入と、使用後の空容器の回収という2つの入口を用意し、集まった容器を再生工場で加工してリサイクルする仕組みです。Öffenの靴の再生糸も、この取り組みから生まれたご縁でした。今回はその糸をニットウェアへと展開します。

 

ジャーナル記事を読む
https://offen-gallery.com/journal/umile/

 

株式会社片山文三郎商店

photographer Yugo Tsuchimoto

 

1915年(大正4年)、京都・高辻室町で「京鹿の子絞り」専門の呉服製造卸業として創業。以来110年余り、着物を染める技法である「絞り」を現代的に発展させ、BUNZABUROやKATAYAMAといったファッションブランドを展開されています。今回は、蔵に大切に保管されてきた端材を分けていただきました。

ジャーナル記事を読む
https://offen-gallery.com/journal/rebornproject-bunsaburo/

 

ヴィンテージ「Levi’s® 501®」の再生プロジェクトに取り組む 山澤亮治さん

約30年にわたり衣服のプレス・検品・縫製・洗浄など、アパレルの現場に携わってこられた方です。2019年、廃棄予定だったヴィンテージ「Levi’s® 501®」との出会いをきっかけにデニムの再生プロジェクトを開始。培ってきた技術と経験を生かし、さまざまなブランドとの協業を通じて、役目を終えようとしていた服に新たな価値を生み出す活動に取り組まれています。

 

余剰在庫となった容器で糸からつくる

ニットウェアに使う再生PET糸の製造を担ってくださったのは、モリトジャパン株式会社の山崎亘さんです。山崎さんは「社会課題に対し、メーカーとしていい取り組みだと思いました」と振り返ってくださいました。ただ、通常のものづくりとはずいぶん勝手が違ったそうです。

 

「原材料の生産にはあまり携わらないため、関係者各所との調整が難しかった」と。いちばん苦労されたのは、ペレットの結晶化の工程。材料を提供する側との調整、そして染色や二次加工の調整に、とにかく時間を要したそうです。

 

強度や風合いを出すためには、用途に応じて紡糸工場と知識を共有し、染色工程を細かく管理することが必須です。肌に直接触れる服として柔らかさや表情を出すために、二次加工の方法や、編機・織機の性能そのものを工夫していただきました。

 

紡糸は岐阜県、撚糸は石川県、染色は奈良県、編み立ては山形県。すべて日本国内です。私が「日本で完結させたい」と言い続けた意味が、この産地の並びに表れていると思っています。

 

同時に、山崎さんからは率直な宿題もいただきました。製品化の可能性は見えてきたけれど、クローズドマテリアルであるため広がりは現状見えない。継続的な供給体制の構築が現実的かどうか、確認も必要である、と。だからこそ、私たちが出口をつくる、そんな思いが湧いてきました。

 

ペレットから糸へ ── 紡糸の工程

私たちが「UMILEヤーン」と呼んでいるこの糸は、こんな道のりをたどります。

  1. 原料(ペレット) ── 回収・洗浄された容器を細かく砕き、樹脂の粒に戻します。結晶化の管理が最も難しい工程です。
  2. 押出工程 ── ペレットを溶かし、細い孔から押し出して繊維の形にします。
  3. 延伸工程 ── 押し出したばかりの繊維を引き伸ばし、分子の向きをそろえて強度を出します。ここで SDYが完成します。まっすぐで、ハリのある糸です。
  4. 仮撚工程 ── SDYに撚りをかけて熱で固定し、撚りを戻す。すると糸に細かな縮れが生まれます。こうして DTYが完成します。ふくらみ、伸縮性、そしてやわらかな肌当たりは、この工程から生まれています。

 

その後、石川で撚りをかけ、奈良で染めて、ようやく編み立てられる糸になります。

 

再生素材で裁断くずを出さない、シンプルニット

ホールガーメントを一部採用したシームレスなニット。手首に取り付けるだけで印象が変わるカフスはブラック・ホワイト・ネイビーの3色展開

1で着用したニットのネイビー。首元の空きや手首のつまり感など、上品かつシンプルに着用したい大人に向けてとことんこだわっています

身長差を感じさせずに着こなしを楽しめるバランスにこだわったセットアップ。パンツは2サイズ展開 photographer Josha Helius, special thanks to marcomonde, L'ANGELIQUE

オッフェンのものづくりは、ゼロ・ウェイストを軸としています。ですから「つくるとき」「買うとき」「処分するとき」の3つの工程でごみを出さないように設計しています。これは、ニットウェアでも変わりません。一部にホールガーメントを採用することで、シームがなく、縫い代の出ない編み立てが可能なので、裁断による生地ロスを最小限に抑えられます。裁断くずが出ないという意味でも、着心地という意味でも、これがいちばん理にかなっています。

 

デザインは、究極にできるだけシンプルに。飽きのこない形で、流行に左右されず長く着ていただけるものに。トップスはフリーサイズでお作りしています。

 

片山文三郎商店との裁断なし、パターンなしの服

片山文三郎商店の奥にある蔵にある資材からセレクトさせていただきました。職人さんたちの手作業による絞りで二つとして同じものがない大変貴重な生地であり、その一つひとつを大切にしていることが伝わってきました。photographer Yugo Tsuchimoto

片山文三郎商店の奥にある蔵にある資材からセレクトさせていただきました。職人さんたちの手作業による絞りで二つとして同じものがない大変貴重な生地であり、その一つひとつを大切にしていることが伝わってきました。photographer Yugo Tsuchimoto

片山文三郎商店の奥にある蔵にある資材からセレクトさせていただきました。職人さんたちの手作業による絞りで二つとして同じものがない大変貴重な生地であり、その一つひとつを大切にしていることが伝わってきました。photographer Yugo Tsuchimoto

片山文三郎商店の奥にある蔵にある資材からセレクトさせていただきました。職人さんたちの手作業による絞りで二つとして同じものがない大変貴重な生地であり、その一つひとつを大切にしていることが伝わってきました。photographer Yugo Tsuchimoto

文三郎さんとのコラボレーションを経て、京都に伺ってジャーナル記事の取材をさせていただいたときに、蔵に案内していただきました。そのときも、生地を、すごく大事に置いていらっしゃることを実感しました。

 

なぜ端材を保管し続けてこられたのかを伺うと、こう教えてくださいました。

 

「糸や生地の段階、そして絞り加工でも、工場さんや職人さんが多く関わっていて、多くの手間がかかっている中で、ハギレとはいえ簡単に捨てることができなかった。着物は直線裁断なのでほとんどハギレが出ませんが、洋服やバッグを作ると裁断の仕方によりハギレが多く出る。それも捨てられなかった理由だと思います」。

 

だからこそ、生かし方は「パターンを作らない服、カットをしない服」しかないと思いました。残っている生地の形そのものに合わせて服のデザインを考える。そうして生まれた一点物15点と、ニットのスタイリングをやろう、と。

片山文三郎商店さんの端材に極力はさみを使わず、パターンをひかないという発想でデザイン。写真のようにいくつかレイヤードをしたり、向きや場所などにこだわらず自由な発想で楽しんでいただきたいです。

片山文三郎商店さんの端材に極力はさみを使わず、パターンをひかないという発想でデザイン。写真のようにいくつかレイヤードをしたり、向きや場所などにこだわらず自由な発想で楽しんでいただきたいです。

片山文三郎商店さんの端材に極力はさみを使わず、パターンをひかないという発想でデザイン。写真のようにいくつかレイヤードをしたり、向きや場所などにこだわらず自由な発想で楽しんでいただきたいです。

完成品をご覧になった取締役の片山一也さんからは、こんな言葉をいただきました。

 

「相変わらず、かわいいものをデザインされるなというリスペクトと、パターンをできる限り使用せずに、カットも最小限にというコンセプトが着物のものづくりと通じるところがあり、片山文三郎商店としても、捨てないだけではなく、どのように活用していくかということを考えるいいきっかけになりました」。

 

素材づくりから絞り加工まで、多くの職人さんや工場の方々が関わり、手間ととき間をかけて生まれたものだからこそ、たとえ小さなハギレであっても「捨てる」という選択にはならなかった。その感覚に、私はとても共感しています。ものづくりの背景を知ることで、今回私たちが取り組んだ「捨てずに、もう一度価値を与える」ということの意味を、改めて深く考えることができました。

 

山澤亮治さんが掘り出した 行き場を失ったデニム

ヴィンテージ「Levi’s® 501®」の再生プロジェクトに取り組む 山澤亮治さん

 

デニムは、ヤマサワプレスの山澤さんが収集・選定してこられたヴィンテージ「Levi’s® 501®」を使わせていただきました。

 

山澤さんは若いころからアメリカ西海岸のカルチャーや古着、デニムに触れ、その背景にある文化や価値観に魅了されてきたそうです。やがてロサンゼルスで、大量の行き場を失っている約20トン、4万本もの「Levi’s® 501®」を前に、「自分が培ってきた技術を生かせば、もう一度価値あるものとしてよみがえらせることができる」と考えたことが、今のデニム再生の原点だと伺いました。実際に倉庫にも行かせていただいたのですが、やっぱり思いがあってやっておられるんだな、という感じで。ぜひ扱わせてほしいと思いました。

 

今回の取り組みについて、山澤さんはこう言ってくださいました。

 

「私自身、これまで『捨てられるはずだったものを、もう一度価値あるものへ』という思いでデニムと向き合ってきました。『捨てる? 捨てない?』という問いから新しい価値を生み出すオッフェンの今回の取り組みに、とても共感しています。その一部として、私が収集・選定してきたヴィンテージ『Levi’s® 501®』を活用していただけることを、大変うれしく思っています」。

 

デニムは鉄板だなと思っているんです。フェミニンな方もいけるし、シンプルもいけるし、カジュアルもいける。ニットにも一点物にも、どちらにも合わせられる。コレクション全体をつなぐ役割を担ってくれています。

オッフェンの靴を履くための、5年後も楽しめる服へ

今回のニットは、靴を履いたときのスタイリングイメージから逆算して作りました。丈の長さがオッフェンの靴とかぶらないこと。オッフェンの靴は基本的にフラットなので、その形をいちばんきれいに見せられるバランスを探しました。トップスをシンプルにした分、視線が足元のボリュームへ流れていくことも意識しています。本当に、オッフェンの靴を履くための服なんです(笑)。頭からつま先まで、楽しんでいただけたらうれしいです。

 

靴のお客さまと同じように、とても幅広い方々に着ていただきたい。年齢もサイズも決め打ちせず、それぞれの体になじむように。「今年っぽいから買う」ではなく、5年後も同じように着ていただける服であってほしいと思っています。

片山文三郎商店の端材からつくったトップスをオンして、山澤亮治さんが再生させたデニムと、オッフェンのシューズで Photographer Joshua Helius

 

循環するワードローブとして、あり続けたい

今回、アイテムを広げようか、と考えることもありました。しかしやはり、あまり広げず、定番的な服をやり続けたい。オッフェンの靴も、5年間ずっと同じようなものを作っています。それと同じくらいベーシックな服でありたい。その上で、襟の深さのような小さなこだわりに寄り添うものを、継続的に展開していけたらと思っています。

 

その間に、洋服に課題を持った方々と取り組んでいく。どんなお困りごとを持ったブランドさんに出会えるのかは、私にとってもまだ未知です。こちらから探しにも行きますし、アプローチもいただきたいと思っています。そうやってパートナーが広がりながら続いていくこと自体が、私たちの考える「お洋服の循環」です。考え方は、靴とまったく同じなんです。

 

次のシーズンは、また違う方々とご一緒したい。3組が2組になっても5組になってもいい。そうやってパートナーが広がりながら続いていくこと自体が、私たちの考える「お洋服の循環」です。考え方は、靴とまったく同じなんです。

 

オッフェンが不定期で展開している「REBORN PROJECT」では、これまでお客さまが持ってきてくださった思い出の布を靴のパーツに変えてきました。それを服のどこかのパーツに変えることも、ありなのかなと考えています。前回も、大島紬の着物やハンカチなど、皆さん本当に思い入れのあるものを持ってきてくださったのを拝見して、その思いも強くなってきています。

 

今回デニムと撮影した私物のダンガリーシャツは、元はロングワンピースだったんです。もう着ないロングワンピースを、ショートパンツとシャツに変えました。皆さんのお家の中にも、着ない服がめちゃくちゃあると思うんです。長すぎる、短すぎる。素材はすごく気に入っているし、柄も気に入っているんだけど、という服が。だったら思いっきりトップスに変えてしまう。今後はそんな企画展開があってもいいなと思っています。

 

在庫を抱えてやるのではなく、持ち寄っていただく。それが、私たちにしかできないことだと思っています。今回のコレクションも、「服を作った」のではなく、「素材の続きを作った」という感覚に近いんです。眠っていた素材や残された生地、さまざまな場所から集まった素材を、もう一度、新しい価値へつなげていくために、これからも挑戦を続けていきたいと考えています。

 

CIRCULAR WARDROBE

Nothing ends. Everything begins again. ーー日坂さとみ

 


 

Information

Öffen ウェアコレクション 2026年9月10日(木)11:00より発売開始

 

Öffen Wear Collection お取り扱い店舗

Öffen the House 代官山店
Öffen 玉川髙島屋S・C店
Öffen Kitano House 北野店
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Öffen 西宮阪急店
Öffen 福岡天神店
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Öffen Journal Editorial Team
Photo & Videographer: JOSHUA HELIUS,
YUGO TSUCHIMOTO, SANA KONDO
Text: YUKA SONE SATO
Editorial direction: LITTLE LIGHTS