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B Corp™が教えてくれた、より良い会社づくりへの羅針盤

2026年7月、Öffen(オッフェン)を運営する株式会社Normsは、環境や社会への配慮、透明性、ガバナンスを総合的に審査する国際認証「B Corp」を取得しました。今回は、取得を記念して、B Market Builder Japan共同代表・溝渕由樹さんをお迎えして、プロデューサーの日坂さとみ、認証取得を担当した河盛由美奈と鼎談を行いました。B Corp認証についての基本と、それが意味すること、さらに、これから私たちが目指すこととともに、約13ヶ月の挑戦を振り返ります。

 

※B Corp認証:米国発の非営利団体B Labが運営する国際認証。環境・社会への配慮、透明性、ガバナンスなどを総合的に審査し、公益性の高い企業に与えられます。現在、世界100カ国以上・約1万1000社が認証を取得。2026年には日本の認証企業が100社に到達しました。

左からオッフェン プロデューサー日坂さとみ、B Corp認証取得を担当したブランド ジェネラル マネージャー河盛由美奈、B Market Builder Japan 共同代表の溝渕由樹氏

「一歩ずつ、心地よい方へ。」と、確実に歩むために

まずは、B Corp認証取得のきっかけから教えてください。

 

日坂:私たちの会社名は株式会社Norms。ラテン語で「規範」という意味なのですが、正しい判断ができる基準を持ちながら会社をつくっていくことを、設立時から会社の芯に据えていました。海外への展開も視野に入れているなかで、世界共通の基準として信頼されているB Corpが必要だと考えて、挑戦しました。「これからの時代のいい会社」を考え実践する企業の共同体・PARaDEに加入して、皆さんとB Corpについて学ぶ機会があったことも、大きな後押しになりましたね。

 

溝渕さん、あらためてB Corpの社会的役割と、他の認証との違いを教えていただけますか?

 

溝渕さん: B Corpは、簡単に言えば「社会性と事業性を両立している企業」の認証です。パーパスを掲げるだけではなく、実践に落とし込んでいるかどうか。明確な基準があり、第三者機関の審査を通過して、ようやくマークを付けることができます。

 

他の認証との一番の違いは、審査の対象です。オーガニックやサーキュラリティに関する認証の多くは、商品や素材が対象。一方でB Corpは、会社全体の経営方針に対する認証なんです。だからB Corpになった会社は、基本方針そのものが同じ基準に則って、すでに実践されている。

B Market Builder Japan 共同代表の溝渕由樹さん

そしてもうひとつの特徴が、取得後のコミュニティです。私たちは「インターディペンデンス(相互依存)」と呼んでいるのですが、すでに実践している企業同士が助け合いながら、互いの発展を促していく姿勢をとっています。B Corp企業が発展していくことで、世界経済全体を少しずつ、地球や人にとっていいものに変えていく。それがB Corpという運動の本質です。オッフェンさんも、これから世界1万1000社とつながる機会があるということですね。

「企業全体で見るという視座を持てるようになりました」

世界基準の認証申請の過程で得た大きな気づき

B Corp認証は、会社にどんな意義をもたらしたと感じていますか?

 

河盛:正直、最初は認証を取ること自体が目的だったんです。でも取ったあと、考え方が変わりました。課題がどんどん明確になって、改善を続けていかないといけない。これまでも環境に配慮したものづくりを続けてきましたが、B Corpを通して、環境だけでなく、働く人や地域社会、取引先との関係、経営の透明性まで含めて、企業全体を見つめ直すことができました。

 

サステナブルという言葉が広がる一方で、「本当に環境に配慮しているの?」という厳しい視線もあります。AIでブランドを調べる方も増えて、根拠がより求められる時代です。第3者機関の厳しい基準で評価を受けることで自分たちの取り組みを可視化して、お客様が安心して選べるブランドでありたい。その思いが、いちばん大きいですね。

「関わることが誇りに思える会社になっていかないといけない」

日坂: 私にとっては、自分たちが「できていなかったこと」が見えたことのほうが、意義深かったです。オッフェンの場合は「人」の部分がまだ足りていないなと気づくことができました。この会社に関わるすべての皆さんが、一緒に仕事をしていることを誇りに思える。そんな会社になっていかないといけない、という意識を常に持ち続けられる。それはすごく意味のあることだと思っています。

 

溝渕: B Corpの基準が一番役に立つのは、その網羅性です。私たちは「ステークホルダーガバナンス」と呼んでいますが、株主だけでなく、お客様や働く人達の人権、お店の周りの地域、そして地球環境や生態系まで、会社に関わるすべての存在をケアしながら発展していきましょう、という考え方が基準に落とし込まれているんです。

 

オッフェンさんは、環境や素材の部分はすでに素晴らしいビジネスモデルをお持ちでした。ただ、どんな会社でも、人やコミュニティのことは気にかけていても、規定にする、ルールにする、方針を立てて発信する、というところは後回しになりがちです。網羅的な基準があるからこそ、そこに気づける。「世界1万1000社のサステナビリティが進んでいる会社がやっているなら、まずはそこまでやろう」という一定のラインを示せるのが、B Corpの基準のいいところです。第三者機関が認証することで、自信と安心感を持って発信できるものになっていくと思います。

取得までの作業で、印象的だったことを教えてください。

 

河盛: 取得まで、申請までの社内制度づくりや資料作成に7ヶ月の歳月を要しました。そこから審査と追加の質問・資料提出を経て、認証までさらに6ヶ月かかっています。申請に向けて、まず、約200の項目をひとつずつ読み解き「なぜこの答えが高く評価されるんだろう」というところから紐解いていくことからはじめたのですが、ここにすごく時間を要しましたね。

 

会社の規模によっても最適解は違うので、「この会社にとって、ここで働く人たちにとっては、どれが一番いいのか」を考え続け、加点に向けて社内で実際に社内のルールも変えたり、すでに認証を取得している他社さんの事例を参考にしたりもしました。

 

B Corp認証は、ひとことで言うなら、「取り組みを証明する」作業。素材ごとの証書を集めるなど、取り組みを数値化して、社内のルールを明文化していく。その積み重ねでした。

日坂: B Corpは世界の基準なので、日本企業のなかで当たり前としてきたことが、世界ではもう少し先を行っているんだな、という気づきもたくさんありましたね。

 

溝渕: B Corpが「認証」であることの意味は、まさにそこにあると思います。第三者の客観的な視点が入るので、なんとなく、ふわっといいことをしているだけでは絶対に通らない。もうひとつのポイントは、「アウトカム(※)をちゃんと示してください」と求められることです。いいことをしている証明だけではなくて、「会社としてどこに向かってやっているのか」「その結果を追っていますか」と問われる。

 

※アウトカム:施策の実施数や参加人数といった直接の結果(アウトプット)に対して、その先に生まれた変化や社会的な成果を指す言葉。B Corpでは取り組みの「その先」を可視化することが重視されます。

 

すでにいい取り組みをされている会社さんほど、そこまでは整理されていないことが多いんです。でも一度やっていただくと、結果を追う習慣も可視化もできる。社会にインパクトがあることって、すぐには成果が出ないから、「あれもこれもやらなきゃ」となりがちなんです。結果を追いながらやることで、本当にインパクトが出るところに集中できる。B Corpはたくさんやればいいわけではなくて、会社のミッションに合っていて、環境や人権にちゃんとインパクトを出し始めているものを評価します。だから実は、リソースの効率化にも役立つんですよ。

 

日坂: 本当にそうですね。ぼやっとやってきたことを、ちゃんと形に残せていないことを自分たちのなかで整理すること。また、インパクトレポートを毎年出す意義も実感しました。

オッフェンは製品そのものの環境面が高評価に

具体的には、どんな取り組みが評価につながったのでしょうか?

 

河盛: 特に評価いただいたのは、環境面です。製品のライフサイクル全体を考えた取り組みが評価されました。「認証を受けたサステナブル素材の採用」「ソースリダクション(※)」「修理・回収サービス」「風呂敷のように繰り返し使えるタオルパッケージ」など、素材の項目はすでにできていることが多かった一方で、証明には時間と、さまざまな部署の協力が必要でした。

 

シューズのパーツを細かく分けて、それぞれの素材の認証資料を集めたり、店舗で環境データを継続的に測定できる仕組みを整えたりしました。そして、「品質保証制度の新設」「アウトソールの張り替え」をはじめ、店舗を中心に廃棄物量・エネルギー使用量の記録を開始し、削減目標を設定するなど、B Corpをきっかけに新しく見直し、改善も多く行いました。

 

※ソースリダクション:オッフェンでは、一般的なシューズと比べて製造工程・パーツ数を減らした設計で、製造時の廃棄物を削減しています。また、洗うことも推奨してライフタイムを延ばしています

「お直しセットの販売」や「リボンパーツの付け直し対応」も評価につながりました

紙袋の製造をやめて、NICE PASSを導入したり、オンラインショップにリユース可能な配送バッグを導入したことも高評価の要因に

環境面以外では、いかがですか?

 

河盛:オッフェンでは、国籍・年齢・経験を問わず、留学生やワーキングホリデー人材を採用するなど、多様な人材を採用しています。また、フレックスタイム制度やテレワークなどの柔軟な働き方の導入のほか、従業員満足度を匿名アンケートで調査したり、お客様のレビューやお問い合わせの対応方法を全社で共有することで、サービス品質の標準化を推進したりしています。これらの「働く人」「地域社会」「ガバナンス」を含めた企業全体の姿勢も評価につながりました。

 

実際に20代前半から60代まで、幅広い方が働いてくれています。「月3回からでいい」という働き方は、他の企業ではなかなかないと思うんです。もともとやっていたことも多いのですが、それを言語化していく作業でもありました。

 

溝渕: 点数で見ても、環境やサーキュラリティに関しては、他の企業さんと比べても高い評価がついていたと思います。もちろんガバナンスや従業員の項目も、基準に合わせて会社を整えていただいて、しっかり満たしてくださっています。

つくり手を後押しする、B Corpの新基準

B Corpの評価基準は、新しくなっているそうですね。

 

溝渕: はい。今年から新しく認証を受ける企業には新基準が適用されて、オッフェンさんは3年後の再認証のタイミングで切り替わります。これまでは200の項目から80点を集める点数制でしたが、新基準では点数制がなくなります。会社の規模や業種ごとに定められた要件を、すべての分野で満たしていく形です。

 

※B Corpの新基準:2026年から順次適用。従来の点数制に代わり、「パーパスとステークホルダーガバナンス」「気候アクション」「環境スチュワードシップとサーキュラリティ」「公正な労働」「人権」など7つの分野すべてで基準を満たすことが求められます。認証後も3年目・5年目と段階的に要件が加わり、継続的な進化を促す設計です。

しかも一度取って終わりではなく、段階的に進化していく仕組みです。たとえば1年目に取り組んだ項目が、3年後にはさらに増えていく。5年でひとつの到達点になって、そこからはキープしていく。一生増え続けるわけではありません。

 

日坂: 新基準は、ものをつくっている人たちを後押しする側面もあるんですね。

 

溝渕: そうなんです。新基準では、製造業、リテール、サービス業と、業種ごとに基準が明確に分かれます。ものをつくっている会社さんは、サーキュラリティの項目が手厚くなる。「製品寿命を延ばす仕組みを、何年以内に取り入れてください」といった要件が入ってくるんです。

 

オッフェンさんの修理や回収の取り組みは、まさにこれからのB Corpで評価されていくところ。ヨーロッパでは規制がどんどん厳しくなっていて、新品を廃棄してはいけない、長く使う工夫をする、という世界の流れとも重なります。

 

会社の規模についても、世界最大のB Corpであるダノンのような巨大企業から小さな会社まで、同じ物差しではなく、規模に応じて公平になるよう設計されています。基準を開いてみると、「点数のためにやらされる」項目ではなくて、「これは会社としてやらなきゃいけないよな」と思えるものになっている。日本の企業さんにとっても、これからもっと使いやすくなると思います。

100社の仲間とつながる、これからのB Corp

日本のB Corpは、ちょうど100社に到達しました。このコミュニティのなかで、オッフェンにはどんな役割を期待しますか?

 

溝渕: 100社を超えて、いろいろな業種の方が集まるようになってきたなかで、靴で、素材のことまで突き詰めているのは初めて。そのノウハウや取り組みを、B Corpのコミュニティのなかでも、そしてB Corpのマークと他の100社の後押しとともに、もっと世の中の人に届けていってほしい。一緒に届けていけたら嬉しいです。

 

今、ヨーロッパではグリーンウォッシュへの視線が本当に厳しくなっています。B Corpはグリーンの部分だけでなく、ガバナンスや従業員に関してもすでに取り組んでいるところにしか取れないもの。だからB Corpを取った企業さんは、自信を持って発信していってほしいんです。

 

※グリーンウォッシュ:実態が伴わないまま、環境に配慮しているように見せかけること。欧州を中心に規制が強化されています。

B Corpのコミュニティに入ることで、これからどんな扉が開くのでしょうか?

 

溝渕: 日本のB Corpコミュニティは、自社で「取りたい」という真剣な会社さんだけが集まってきました。100社に到達した今、次の3年間は、消費者の方や銀行、デベロッパーなど、より幅広い人たちにB Corpを知ってもらうフェーズに入ります。

 

そしてもうひとつの価値が、グローバルなコミュニティです。海外進出のきっかけはもちろん、企業同士の学び合い、サプライチェーンの共有、一緒にマーケティングをすること。国の垣根を越えたB Corp同士の連携を、もっと促していきたい。だからオッフェンさんには、「こういうことをやってみたい」と、むしろどんどん言っていただきたいんです。私たちもいろいろなケースをつくれるので。世界を志している企業とは、一緒に出ていきたいと思っています。

 

実際、インバウンドのお客様への効果もあるんですよ。あるB Corpのお店では、マークを窓に貼り始めたら、それを見て入ってきてくださる海外のお客様が増えたそうです。認証を知っている方の「応援買い」から、ファンの広がりも生まれています。

河盛さんは代官山の店頭に立つことも多いです。店舗にB Corpのロゴが貼られることへの意気込みを聞かせてください。

 

河盛: まず、「このロゴ、どこに貼ろう?」というくらい楽しみです(笑)。代官山の店舗は海外からのお客様が本当に多くて、「この取り組みは証明できているの?」「認証はあるの?」と聞かれることが実際にあるんです。この基準をクリアしたことが証明になるので、これからは説明が要らなくなる。

 

同時に、社内の課題も見えています。B Corpの知識を社内で丁寧に共有して、スタッフの誰もが同じように説明できるようにしていきたい。一緒に取り組んできたスタッフは、認証が取れたことで「ここで働く一員なんだ」という誇りや、売っている商品の価値の高まりを感じてくれていると思います。自信を持って販売できるって、すごく大きいことなんです。早くB Corpコミュニティに入りたいです。

取得はゴールではなく、あくまでもスタート

最後に、これからのオッフェンについて聞かせてください。

 

日坂: B Corpの取得がスタートだと思っています。私たち、真面目にやってきたなとは思うんです(笑)。でも、これからやらないといけないことは、商品はもちろん、やっぱり「人」のところ。働いてくれている従業員の皆さんが「この会社で働いてよかった」と思えるようにしたい。お客様にも「オッフェンを選んでよかった」と、本当に喜んでもらいたい。それって簡単なように思えて、簡単じゃないんですよね。

でも、周りの人が嬉しく思ってくれることが、結局は企業の成長になる。それをずっとやり続けていくことなんだと思います。B Corpを取ったことで、海外に向けてなど、新しい挑戦も見えてきました。真面目にいいことをやっていこう、いい会社をつくっていこう。その気持ちは変わりません。

 

国内では2026年9月上旬に名古屋の新店舗もオープンし、「一歩ずつ、心地いいほうへ」と歩みを進めるオッフェン。B Corpという羅針盤を手にした彼らの航海は、まだ始まったばかりです。



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B Corp認証取得について、各メディアに掲載されました。オッフェンのB Corp認証取得について、ELLE、Shift Cに取材いただきました。認証取得に至るまでの歩みや、創業以来取り組んできたものづくり、オッフェンがこれから目指すことについて、それぞれの視点からご紹介いただいています。ぜひご覧ください。


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Öffen Journal Editorial Team

Photographer: SANA KONDO

Text: YUKA SONE SATO

Editorial direction: LITTLE LIGHTS

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