ゼロ・ウェイストでゼロからものづくり オッフェンが靴に込めたこだわりとは

オッフェンでは、3R(リデュース・リユース・リサイクル)を基本に、理想の靴をゼロから生み出す挑戦を続けてきました。その一足が形を成すまでには3年弱という時間が必要でした。優れた技術を持つ工場へ何度も足を運び、職人たちと膝を突き合わせ、数えきれない対話と試行錯誤を重ね、細部に宿る本質を共に追求してきたのです。
その答えを形にした一つが、ニット成形。糸の撚り方からこだわり抜き、端の部分だけを的確にレーザーカットすることで、余分な糸や布、端材の発生を限りなく抑え、ごみを最小限に。ニット特有の履き口の伸びを防ぎ、確かなホールド感を生む木型の決定にも時間を惜しまず、ミニマルな美学への静かな挑戦を続けています。
さらに、あえて裏地を設けないという決断は、貼り合わせる箇所や糊の使用を抑えるだけでなく、まるで素肌のような柔らかさで足に馴染み、靴下のような感覚で履ける、かつてない履き心地への純粋な想いから。スニーカーのような軽やかさと心惹かれる美しさ、その完璧な調和のために、甲が浅いデザインでも1ミリ単位でフィット感を調整。装飾として施される一本のライン、わずかなカッティングにも一切妥協していません。そのこだわりは、例えばオッフェンデビュー作のはじまりの1足目の品番「SPO -0001」を、約2年間実際に履き続け、見えない部分の機能性まで徹底的に検証したことにも表れています。
織り込まれているのは、しあわせな環境への想い
アッパーには、ペットボトル約8本から生まれ変わる再生ポリエステルを使用しています。アメリカやアジアなどから回収されたペットボトルは、信頼できる作り手を通して加工されています。その輝きと優しさは、ご家庭で水洗いできるという確かな品質にも表れています。日本の高いペットボトル回収率にも支えられ、洗浄、殺菌、粉砕、熱処理という工程には、たくさんの技術と愛情が詰まっているのです。

動物にとってもやさしい製法で作りたい
ブーツなど秋冬仕様のシューズには、アッパーにウール素材をミックスしています。動物福祉の観点から、ウールには羊たちの体を傷つけることなく育まれたノンミュールジングウールを採用しています。

私たちがノンミュールジングウールを使うのは、動物にも「快適に生きる権利」があると考えるからです。ミュールジングとは、羊の臀部の皮膚を切り取る慣習で、寄生虫を防ぐために行われるものですが、その方法は非常に痛みを伴い、羊にとって大きなストレスになります。
「効率」や「コスト」のために動物を犠牲にするやり方は選びたくありません。ノンミュールジングウールは、羊が苦痛を受けることなく丁寧に飼育される農場から採られたウールです。
「人が心地よく暮らすために、動物の命や尊厳が犠牲になるべきではない」という思いを形にした選択です。私たちが届けたいのは、使う人も、つくる人も、動物も、みんなが気持ちよくいられる環境で作られる靴です。
ウールミックスの商品はこちらから
ウールがミックスされている商品には、靴底にノンミュールジングウールのステッカーが貼られています。
人が心地よさを感じられる、徹底した心配り
足元からは、軽やかな一歩と未来への思いやりを。インソールには、衝撃を吸収し、3~5年で土に還るETPU素材を選びました。本底は、37%のバイオベース炭素を含むシリコン製。医療現場でも使われるほど安全で、もし焼却されても有害物質を出さず、自然に優しい素材です。底の成形は、まるで無駄を生まないアートのよう。クッキー型ではなくプリンのように型に流し込むことでごみをなくし、アルミの型は溶かして再利用。見えない部分の接着剤でさえ、使用量を通常の40%以下に抑え、刺激の少ない水溶性の糊で、人にも地球にも最大限の優しさを追求しました。
そして何よりも、つくる人の笑顔が、私たちの品質を支えています。パーツを減らし、製造工程をシンプルにすることで、作業時間を通常の靴の約半分に。働く人たちの負担を軽くし、誇りを持ってものづくりに向き合える環境こそが、心から愛せる一足を生み出すと、私たちは信じています。
手にした瞬間から始まる、心地よい循環
製品をお届けする道のりから、お客様の手に渡った後、そして私たちの想いを伝える空間まで。そのすべてにおいて、地球への負荷を減らし、喜びが循環するような工夫を凝らしたい。それが私たちの願いです。
Illustration: Natsu Yamaguchi (702Inc.)
だから、輸送も新しいかたちを考えました。靴箱を使わず輸送用段ボールに直接入れる事で、一度により多くを運び、コストもCO2も削減。その一部の段ボールは、お店ではディスプレイの一部として新たな命を吹き込まれます。お渡しには風呂敷としても使える大判タオルを採用。自然由来の原料や微生物分解などによって、環境の不可を最大限まで軽減させたものづくりと、吸収力の高い確かな品質が魅力のツバメタオルさんとコラボレーションしています。大切な一足を守るシューキーパーでさえ、自然に還る優しさを。植物由来の生分解性プラスチックは、CO2排出も少なく、やがて土へと還ります。
シューズをお買い上げのお客様には、靴箱ではなくタオル地の風呂敷でお包みし、お渡ししています。風呂敷は、キッチンタオルや赤ちゃんのお包みなど、さまざまな用途に活用できます。
そして、私たちの想いを映す店内もまた、時が育んだ美しさを大切にしています。元の空間を最大限に活かし、内装は最小限に。ヴィンテージの家具やアップサイクルされた品々が並び、新しい資源を極力使わずに、廃材を活用することで、私たちのライフスタンスそのものを感じていただける場所。そうありたいと願っています。
Öffen 玉川髙島屋S・C店の店内の様子。ヴィンテージラグや不要になったクッションにリサイクル生地を貼り付けてオットマンに仕上げました。また、ディスプレイ用の小物なども、ヴィンテージショップや間伐材を使った木工作品などから買い付けています。
未来への責任を、見えるかたちで
一足の靴がもたらす喜びと、地球への負荷。その問いに誠実に向き合い、現状を数値で示すことは、より良い未来への私たちの約束です。
一足から生まれるごみは、たった約50g。そして、ライフサイクル全体での温室効果ガス排出量は4.179 kg CO2 eq.(2022年9月~2023年8月実績)。これは一般的な革靴の半分以下の数値です。しかし、これは私たちにとっては誇りではなく、次なる挑戦への大切な一歩です。この数字を道しるべに、地球への負荷を減らす挑戦を、私たちはこれからも続けていきます。
Öffen Journal Editorial Team
text: YUKA SONE SATO (LITTLE LIGHTS)
オッフェンでは、3R(リデュース・リユース・リサイクル)を基本に、理想の靴をゼロから生み出す挑戦を続けてきました。その一足が形を成すまでには3年弱という時間が必要でした。優れた技術を持つ工場へ何度も足を運び、職人たちと膝を突き合わせ、数えきれない対話と試行錯誤を重ね、細部に宿る本質を共に追求してきたのです。
その答えを形にした一つが、ニット成形。糸の撚り方からこだわり抜き、端の部分だけを的確にレーザーカットすることで、余分な糸や布、端材の発生を限りなく抑え、ごみを最小限に。ニット特有の履き口の伸びを防ぎ、確かなホールド感を生む木型の決定にも時間を惜しまず、ミニマルな美学への静かな挑戦を続けています。
さらに、あえて裏地を設けないという決断は、貼り合わせる箇所や糊の使用を抑えるだけでなく、まるで素肌のような柔らかさで足に馴染み、靴下のような感覚で履ける、かつてない履き心地への純粋な想いから。スニーカーのような軽やかさと心惹かれる美しさ、その完璧な調和のために、甲が浅いデザインでも1ミリ単位でフィット感を調整。装飾として施される一本のライン、わずかなカッティングにも一切妥協していません。そのこだわりは、例えばオッフェンデビュー作のはじまりの1足目の品番「SPO -0001」を、約2年間実際に履き続け、見えない部分の機能性まで徹底的に検証したことにも表れています。
織り込まれているのは、しあわせな環境への想い
アッパーには、ペットボトル約8本から生まれ変わる再生ポリエステルを使用しています。アメリカやアジアなどから回収されたペットボトルは、信頼できる作り手を通して加工されています。その輝きと優しさは、ご家庭で水洗いできるという確かな品質にも表れています。日本の高いペットボトル回収率にも支えられ、洗浄、殺菌、粉砕、熱処理という工程には、たくさんの技術と愛情が詰まっているのです。
動物にとってもやさしい製法で作りたい
ブーツなど秋冬仕様のシューズには、アッパーにウール素材をミックスしています。動物福祉の観点から、ウールには羊たちの体を傷つけることなく育まれたノンミュールジングウールを採用しています。
私たちがノンミュールジングウールを使うのは、動物にも「快適に生きる権利」があると考えるからです。ミュールジングとは、羊の臀部の皮膚を切り取る慣習で、寄生虫を防ぐために行われるものですが、その方法は非常に痛みを伴い、羊にとって大きなストレスになります。
「効率」や「コスト」のために動物を犠牲にするやり方は選びたくありません。ノンミュールジングウールは、羊が苦痛を受けることなく丁寧に飼育される農場から採られたウールです。
「人が心地よく暮らすために、動物の命や尊厳が犠牲になるべきではない」という思いを形にした選択です。私たちが届けたいのは、使う人も、つくる人も、動物も、みんなが気持ちよくいられる環境で作られる靴です。
ウールミックスの商品はこちらから

ウールがミックスされている商品には、靴底にノンミュールジングウールのステッカーが貼られています。
人が心地よさを感じられる、徹底した心配り
足元からは、軽やかな一歩と未来への思いやりを。インソールには、衝撃を吸収し、3~5年で土に還るETPU素材を選びました。本底は、37%のバイオベース炭素を含むシリコン製。医療現場でも使われるほど安全で、もし焼却されても有害物質を出さず、自然に優しい素材です。底の成形は、まるで無駄を生まないアートのよう。クッキー型ではなくプリンのように型に流し込むことでごみをなくし、アルミの型は溶かして再利用。見えない部分の接着剤でさえ、使用量を通常の40%以下に抑え、刺激の少ない水溶性の糊で、人にも地球にも最大限の優しさを追求しました。
そして何よりも、つくる人の笑顔が、私たちの品質を支えています。パーツを減らし、製造工程をシンプルにすることで、作業時間を通常の靴の約半分に。働く人たちの負担を軽くし、誇りを持ってものづくりに向き合える環境こそが、心から愛せる一足を生み出すと、私たちは信じています。
手にした瞬間から始まる、心地よい循環
製品をお届けする道のりから、お客様の手に渡った後、そして私たちの想いを伝える空間まで。そのすべてにおいて、地球への負荷を減らし、喜びが循環するような工夫を凝らしたい。それが私たちの願いです。

Illustration: Natsu Yamaguchi (702Inc.)
だから、輸送も新しいかたちを考えました。靴箱を使わず輸送用段ボールに直接入れる事で、一度により多くを運び、コストもCO2も削減。その一部の段ボールは、お店ではディスプレイの一部として新たな命を吹き込まれます。お渡しには風呂敷としても使える大判タオルを採用。自然由来の原料や微生物分解などによって、環境の不可を最大限まで軽減させたものづくりと、吸収力の高い確かな品質が魅力のツバメタオルさんとコラボレーションしています。大切な一足を守るシューキーパーでさえ、自然に還る優しさを。植物由来の生分解性プラスチックは、CO2排出も少なく、やがて土へと還ります。

シューズをお買い上げのお客様には、靴箱ではなくタオル地の風呂敷でお包みし、お渡ししています。風呂敷は、キッチンタオルや赤ちゃんのお包みなど、さまざまな用途に活用できます。
そして、私たちの想いを映す店内もまた、時が育んだ美しさを大切にしています。元の空間を最大限に活かし、内装は最小限に。ヴィンテージの家具やアップサイクルされた品々が並び、新しい資源を極力使わずに、廃材を活用することで、私たちのライフスタンスそのものを感じていただける場所。そうありたいと願っています。

Öffen 玉川髙島屋S・C店の店内の様子。ヴィンテージラグや不要になったクッションにリサイクル生地を貼り付けてオットマンに仕上げました。また、ディスプレイ用の小物なども、ヴィンテージショップや間伐材を使った木工作品などから買い付けています。
未来への責任を、見えるかたちで
一足の靴がもたらす喜びと、地球への負荷。その問いに誠実に向き合い、現状を数値で示すことは、より良い未来への私たちの約束です。
一足から生まれるごみは、たった約50g。そして、ライフサイクル全体での温室効果ガス排出量は4.179 kg CO2 eq.(2022年9月~2023年8月実績)。これは一般的な革靴の半分以下の数値です。しかし、これは私たちにとっては誇りではなく、次なる挑戦への大切な一歩です。この数字を道しるべに、地球への負荷を減らす挑戦を、私たちはこれからも続けていきます。
Öffen Journal Editorial Team
text: YUKA SONE SATO (LITTLE LIGHTS)