「お客様の愛した靴に、新しい物語を紡ぐ場所」である「Öffen Pre-Loved Store」のパートナー、KISHの姜 勝大さんと描く未来

『どうしても手放さなくなってしまったシューズ達の寿命を少しでも伸ばせたら』。オッフェンは創業当初から、廃材や再生素材を使ったものづくりを続けてきましたが、一方で「使い終わったその先」について、ずっと悩みを抱えていました。
そんな、衣類や靴の廃棄や環境問題を解決しようと、世界中でスタートアップが邁進しています。2020年に設立した米ReCircledは、リユース不可なものを素材分解をしてリサイクル原料化。その仕組みは、大手アウトドア・アパレルのTimberlandなどに活用されています。靴専用のリサイクルを行うオランダのFastFeetGrindedは、回収した資源を素材ごとに粉砕・分離し、100%原料にまで再資源化。Asics社などに導入されているだけでなく、英国の「ReNewShoe」にライセンス販売することで、英国全土の本格展開を後押し。
また、インドのGreensoleは回収した85%をサンダルに再生させ、創業から約10年で、累計61.7万足以上をアップサイクルしています。
大切に作り上げた靴は、私達にとって子どものような存在。そこを、ただ回収して売るのではなく、補修や洗浄、撮影に至るまできちんと手を入れたうえで、お客様に再び届けることでゴミを減らすこともできる。そんなスタートアップが日本にもあると聞き、対話を重ねてきました。株式会社KISHの代表である姜(かん)勝大さんは、ブランドを大切に思ってくれる気持ちと誠意の持ち主。パートナーとしてお迎えし、やっと11月に「Öffen Pre-Loved Store」をオープンすることができたのです。今回は、姜さんをお迎えして、インタビューを行いました。
オッフェンのリユース専用通販サイト「Öffen Pre-Loved Store」はKISHさんが運営しています。
Pre-Loved品でブランドに新しい視点や価値を与えるパートナーでありたい
――KISHの活動内容を教えてください。
ブランドさんが過去に世の中に送り出したプロダクトを、もう一度流通させるための仕組みを提供しています。2024年に始まったばかりですが、古着や二次流通が自然に選ばれる世の中を目指して活動しています。
――KISHのサービスは、具体的にどのように運用されているんですか?
店頭回収されたシューズ。事前に手洗いされたシューズ本体とインソールを回収しています。シューキーパーと不織布が揃っている場合はそちらもリユースとして回収を受け付けています。
大きくは、店頭回収と郵送回収の2つの流れがあります。たとえばオッフェンさんとの取り組みでは、店頭に靴をお持ちいただいたお客様にLINEでクーポンを発行して、店舗で一定数が集まったタイミングで倉庫に送ってもらっています。郵送の場合は、お客様から直接弊社指定の倉庫に靴を送っていただき、Öffen公式ウェブショップで使える2,000円分のクーポンをお渡ししています。
――回収された商品は、どのように処理されていくんでしょうか?
検品スタッフがシューズ内の汚れを丁寧に除去している様子。写真提供:KISH
回収品は、葛西にあるOTSさんの倉庫に届きます。OTSさんはアパレルやジュエリーを専門に40年以上扱ってきた物流会社で、倉庫内でガスを使わないなど、衣類や靴ににおいが移らないようにするための配慮を徹底してくれています。
倉庫内には補修や検品を行うチームもいて、ソールの剥がれ、ロゴの再接着、インソールの補修など、細かな部分まで対応していただいています。補修が終わったアイテムは、複数の角度から撮影し、状態や補修箇所も明記したうえで、ECサイト「Öffen Pre-Loved Store」に出品されます。
一方で、補修しても再販が難しいアイテムについては、アップサイクルの可能性も検討しています。すぐには答えが出ない部分もありますが、なるべく最後まで捨てずに済む方法を模索しています。
――KISH立ち上げに至った、決定的な出来事は何だったのでしょうか?
僕自身、昔から古着が好きで、メルカリや海外のアプリで売買をよくしていました。前職のコンサル時代には、海外ブランドと一緒にプロジェクトを進める機会も多かったんですが、その中で感じたのが、新品市場が頭打ちになってきている一方で、中古市場はすごく元気だったということです。同時に「サステナビリティが求められている」と言いつつ、それが事業として成り立っていないケースも多くて。「いいことだけど続かない」というジレンマをずっと感じていました。
僕が目指したのは、善意やボランティアではなく、ビジネスとして持続可能な形で循環をつくる仕組みです。ブランドが新品を売ることだけに依存せず、二次流通でもきちんと価値が還元されるモデルを実現したいと考えました。
でも、ただ中古品を売るだけでは意味がない。大切なのは、ブランドが大事にしてきた価値や世界観を活かしながら、次の誰かにつなぐ仕組みがあるかどうか。ブランドの世界観や顧客との関係性を崩すことなく、それをむしろ強化するかたちで中古品が存在できたら、それはブランドにとっても意味のある新しい価値創出になるはず。そう信じて始めました。
――ブランドの価値をより高めていくために、大切にしていることはなんですか?
KISHが目指しているのは、「中古=安くてお得」だけじゃない視点です。ブランドが届けてきた価値を、どのように次の人にも引き継いでいけるかが大事だと思ってます。
Pre-Lovedのお取り組みをさせていただいている中で例えると、Allbirdsさんは「ReRun」と銘打ち、資源循環に「再び走り出す」というメッセージを載せています。また、CANADA GOOSEさんは「Generations」と冠し「次世代へつなぐ」ことを重要視しながら「思い出まで温かく」というメッセージを伝えています。
このように、ブランドによって文化や違った世界観があります。それを一つひとつ大切にしながら、Pre-Loved品によってまた新しい視点や価値を与える事ができる。KISHは、そうした設計を一緒に考えるパートナーでありたいと思っています。
――事業を立ち上げるうえで、どのような困難がありましたか?
僕自身、もともとアパレル業界にいたわけではないので、人脈がまったくなかったんです。なので、最初の一歩目は「この人は信頼できる」と思ってもらうところからのスタートでした。
その意味で、助けられたのはまわりの仲間たちです。紹介を通じて広がっていったご縁の中で、「あの人が紹介するなら信頼できる」という繋がりが重なって、少しずつ理解してもらえるようになっていった感覚があります。
――いま中古市場が活況ですが、そのことについてどう感じていますか?
プレイヤーは増えてますし、方向性もさまざまだと思っています。でも僕は「みんな違ってみんないい」って思っていて。
たとえばメルカリのようにお客様同士でやりとりするところと、うちのようにブランドさんと一緒に品質や体験を設計していくところでは、求められるものも違います。中古車で言えば、「安心して買いたい」という人と、「とにかく安くていい」という人がいるようなものですね。
KISHの役割は、ブランドの信頼や価値観をそのまま持ち込んで、中古であっても“そのブランドらしさ”を感じてもらえるような体験を設計していくことだと思っています。
――今後、どのような展望を描いていますか?
今の一番の目標は、協業してくださるブランドさんをもっと増やすこと。そして、その中で成果をしっかり出していくことです。
特に、環境への意識が高いブランドさんは、取り組みに対して前向きに話を聞いてくださることが多いです。でも、最終的には「それが本当に事業として成り立つのか」が重要になる。だからこそ、僕たちの仕組みが収益的にも成立することを、実績として示していかなければならないと思っています。
KISHとしては、そこをきちんとかたちにしていくことが、これからの大きな挑戦だと思っています。
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Walk the path of sustainability with our pre-loved shoes.
Öffen Pre-Loved Storeはオッフェンのリユースサイトです。Öffen Pre-Loved Storeはこちらから
Pass and enjoy the next journey.
オッフェンのシューズを店頭にお持ちいただくか、またはご郵送いただくと、2,000円分のクーポンを差し上げます。回収方法はこちらから
Öffen Journal Editorial Team
text: YUKA SONE SATO (LITTLE LIGHTS)
『どうしても手放さなくなってしまったシューズ達の寿命を少しでも伸ばせたら』。オッフェンは創業当初から、廃材や再生素材を使ったものづくりを続けてきましたが、一方で「使い終わったその先」について、ずっと悩みを抱えていました。
そんな、衣類や靴の廃棄や環境問題を解決しようと、世界中でスタートアップが邁進しています。2020年に設立した米ReCircledは、リユース不可なものを素材分解をしてリサイクル原料化。その仕組みは、大手アウトドア・アパレルのTimberlandなどに活用されています。靴専用のリサイクルを行うオランダのFastFeetGrindedは、回収した資源を素材ごとに粉砕・分離し、100%原料にまで再資源化。Asics社などに導入されているだけでなく、英国の「ReNewShoe」にライセンス販売することで、英国全土の本格展開を後押し。
また、インドのGreensoleは回収した85%をサンダルに再生させ、創業から約10年で、累計61.7万足以上をアップサイクルしています。
大切に作り上げた靴は、私達にとって子どものような存在。そこを、ただ回収して売るのではなく、補修や洗浄、撮影に至るまできちんと手を入れたうえで、お客様に再び届けることでゴミを減らすこともできる。そんなスタートアップが日本にもあると聞き、対話を重ねてきました。株式会社KISHの代表である姜(かん)勝大さんは、ブランドを大切に思ってくれる気持ちと誠意の持ち主。パートナーとしてお迎えし、やっと11月に「Öffen Pre-Loved Store」をオープンすることができたのです。今回は、姜さんをお迎えして、インタビューを行いました。

オッフェンのリユース専用通販サイト「Öffen Pre-Loved Store」はKISHさんが運営しています。
Pre-Loved品でブランドに新しい視点や価値を与えるパートナーでありたい
――KISHの活動内容を教えてください。
ブランドさんが過去に世の中に送り出したプロダクトを、もう一度流通させるための仕組みを提供しています。2024年に始まったばかりですが、古着や二次流通が自然に選ばれる世の中を目指して活動しています。
――KISHのサービスは、具体的にどのように運用されているんですか?

店頭回収されたシューズ。事前に手洗いされたシューズ本体とインソールを回収しています。シューキーパーと不織布が揃っている場合はそちらもリユースとして回収を受け付けています。
大きくは、店頭回収と郵送回収の2つの流れがあります。たとえばオッフェンさんとの取り組みでは、店頭に靴をお持ちいただいたお客様にLINEでクーポンを発行して、店舗で一定数が集まったタイミングで倉庫に送ってもらっています。郵送の場合は、お客様から直接弊社指定の倉庫に靴を送っていただき、Öffen公式ウェブショップで使える2,000円分のクーポンをお渡ししています。
――回収された商品は、どのように処理されていくんでしょうか?

検品スタッフがシューズ内の汚れを丁寧に除去している様子。写真提供:KISH
回収品は、葛西にあるOTSさんの倉庫に届きます。OTSさんはアパレルやジュエリーを専門に40年以上扱ってきた物流会社で、倉庫内でガスを使わないなど、衣類や靴ににおいが移らないようにするための配慮を徹底してくれています。
倉庫内には補修や検品を行うチームもいて、ソールの剥がれ、ロゴの再接着、インソールの補修など、細かな部分まで対応していただいています。補修が終わったアイテムは、複数の角度から撮影し、状態や補修箇所も明記したうえで、ECサイト「Öffen Pre-Loved Store」に出品されます。
一方で、補修しても再販が難しいアイテムについては、アップサイクルの可能性も検討しています。すぐには答えが出ない部分もありますが、なるべく最後まで捨てずに済む方法を模索しています。
――KISH立ち上げに至った、決定的な出来事は何だったのでしょうか?
僕自身、昔から古着が好きで、メルカリや海外のアプリで売買をよくしていました。前職のコンサル時代には、海外ブランドと一緒にプロジェクトを進める機会も多かったんですが、その中で感じたのが、新品市場が頭打ちになってきている一方で、中古市場はすごく元気だったということです。同時に「サステナビリティが求められている」と言いつつ、それが事業として成り立っていないケースも多くて。「いいことだけど続かない」というジレンマをずっと感じていました。
僕が目指したのは、善意やボランティアではなく、ビジネスとして持続可能な形で循環をつくる仕組みです。ブランドが新品を売ることだけに依存せず、二次流通でもきちんと価値が還元されるモデルを実現したいと考えました。
でも、ただ中古品を売るだけでは意味がない。大切なのは、ブランドが大事にしてきた価値や世界観を活かしながら、次の誰かにつなぐ仕組みがあるかどうか。ブランドの世界観や顧客との関係性を崩すことなく、それをむしろ強化するかたちで中古品が存在できたら、それはブランドにとっても意味のある新しい価値創出になるはず。そう信じて始めました。
――ブランドの価値をより高めていくために、大切にしていることはなんですか?
KISHが目指しているのは、「中古=安くてお得」だけじゃない視点です。ブランドが届けてきた価値を、どのように次の人にも引き継いでいけるかが大事だと思ってます。
Pre-Lovedのお取り組みをさせていただいている中で例えると、Allbirdsさんは「ReRun」と銘打ち、資源循環に「再び走り出す」というメッセージを載せています。また、CANADA GOOSEさんは「Generations」と冠し「次世代へつなぐ」ことを重要視しながら「思い出まで温かく」というメッセージを伝えています。
このように、ブランドによって文化や違った世界観があります。それを一つひとつ大切にしながら、Pre-Loved品によってまた新しい視点や価値を与える事ができる。KISHは、そうした設計を一緒に考えるパートナーでありたいと思っています。
――事業を立ち上げるうえで、どのような困難がありましたか?
僕自身、もともとアパレル業界にいたわけではないので、人脈がまったくなかったんです。なので、最初の一歩目は「この人は信頼できる」と思ってもらうところからのスタートでした。
その意味で、助けられたのはまわりの仲間たちです。紹介を通じて広がっていったご縁の中で、「あの人が紹介するなら信頼できる」という繋がりが重なって、少しずつ理解してもらえるようになっていった感覚があります。
――いま中古市場が活況ですが、そのことについてどう感じていますか?
プレイヤーは増えてますし、方向性もさまざまだと思っています。でも僕は「みんな違ってみんないい」って思っていて。
たとえばメルカリのようにお客様同士でやりとりするところと、うちのようにブランドさんと一緒に品質や体験を設計していくところでは、求められるものも違います。中古車で言えば、「安心して買いたい」という人と、「とにかく安くていい」という人がいるようなものですね。
KISHの役割は、ブランドの信頼や価値観をそのまま持ち込んで、中古であっても“そのブランドらしさ”を感じてもらえるような体験を設計していくことだと思っています。
――今後、どのような展望を描いていますか?
今の一番の目標は、協業してくださるブランドさんをもっと増やすこと。そして、その中で成果をしっかり出していくことです。
特に、環境への意識が高いブランドさんは、取り組みに対して前向きに話を聞いてくださることが多いです。でも、最終的には「それが本当に事業として成り立つのか」が重要になる。だからこそ、僕たちの仕組みが収益的にも成立することを、実績として示していかなければならないと思っています。
KISHとしては、そこをきちんとかたちにしていくことが、これからの大きな挑戦だと思っています。
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Walk the path of sustainability with our pre-loved shoes.
Öffen Pre-Loved Storeはオッフェンのリユースサイトです。Öffen Pre-Loved Storeはこちらから
Pass and enjoy the next journey.
オッフェンのシューズを店頭にお持ちいただくか、またはご郵送いただくと、2,000円分のクーポンを差し上げます。回収方法はこちらから
Öffen Journal Editorial Team
text: YUKA SONE SATO (LITTLE LIGHTS)