オッフェンが2025年大阪・関西万博 大阪ヘルスケアパビリオンのアテンダントユニフォームに選出。万博に見る未来への価値観とは

2025年の一大イベント、大阪・関西万博には行かれましたか? 2030年の達成を目標としたSDGsを5年後に控え「いのち輝く未来をデザインする」場として、世界の国々と未来への価値観を共有しています。宇宙や太陽、大地という重要な繋がりを共有する地球では、様々な国々が文化的な美しさを持ちながら、改良されるべき問題点をたくさん抱えています。これらを平和的に解決するために必要なのが、技術革新や共通概念、そしてコミュニケーションの力。中でも、iPS細胞をはじめとした科学技術を駆使して、生活に密接した未来の暮らしのアイデアを提案する大阪ヘルスケアパビリオンは話題となりました。そんな人気パビリオンのアテンダントユニフォームシューズに、私達オッフェンのシューズが採用されました。
未来への革新と多様化を示す大阪ヘルスケアパビリオンのユニフォームは、水や自然との調和を感じさせるグラデーションカラーと、やわらかな曲線を取り入れたデザインで構成されています。季節や体調に合わせてベスト・長袖・半袖を自由に組み合わせられる仕様で、機能性と美しさを兼ね備えています。
オッフェンのシューズも、そんなユニフォームの世界観に共鳴する一足として採用いただきました。上品で洗練されたフォルムに加え、長時間の着用にも対応する軽さとフィット感が評価され、実際に着用されたスタッフの方々からも「一日中履いていても本当に疲れにくい」とのお声をいただいています。未来と向き合う現場にふさわしい、心地よさと意志をあわせ持ったシューズとして、選んでいただきました。

大阪ヘルスケアパビリオンのテーマは「REBORN(再生)」。曲線的な広がりのある室内は、生命の再生と進化を象徴し、細胞分裂を模した光と音のインタラクティブ空間が広がります。また、パビリオンの設計を手掛けた東畑建築事務所によると、建築そのものも「再生」をテーマに据え、環境と共生する循環システムが随所に組み込まれているとか。魚の養殖と植物の水耕栽培を組み合わせた循環型農業の採用や、バイオマス由来の燃料電池の使用など、展示全体を通じて、未来の暮らしにおける「命」「資源」「エネルギー」のつながりを体感することができます。
編集部厳選! 注目のサステナパビリオンを5つご紹介
世界の国々や企業が、それぞれの視点で表現した「持続可能性」が一同に介した大阪・関西万博。コンセプトや展示内容だけでなく、建築や資材においてもサステナビリティへのこだわりや最新技術、各国の文化を取り入れた建築表現の自由さもとても魅力でした。今回は、特に秀逸だと感じた展示を、Öffenエディトリアルチームが独断と偏見で選び、魅力をご紹介します。
1 ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier
Victor Picon ©Cartier
カルティエが内閣府、経済産業省、博覧会協会と共同出展するウーマンズ パビリオンは、すべての人々が平等で尊重し、歩み、能力を発揮できる世界へのきっかけを生み出すことを目指しています。
パビリオンではまず、自分の名前を録音するところから始まります。そして、小説家やアクティビストとして活躍中の女性達の半生を表すトンネルを通ることで、女性たちの視点を疑似体験します。自然光が差し込む仄暗い空間に抜けると、枯山水のような静けさの中へ。そこでは、これまで訪れた人たちの名前が膨大な波のようにヘッドフォンを通り抜け、聴覚を通じて女性一人ひとりの存在が浮き上がるのを感じることができます。その後、女性であるがゆえの困難や不平等を数値化したパネルや、エンパワーメントやレンジリエンスのメッセージが浮かび上がる装置を使ったインタラクティブな仕掛けにより、強いメッセージが心に刻まれていきます。テクノロジーと自然や静寂が融合した体験は、女性視点へと優しく導き、心の奥底と社会システムへとそっと訴えかけます。
ドバイ万博の「ウーマンズ パビリオン」の意思を受け継いだ当パビリオンの設計は、同じくドバイにて日本館の建築に携わった永山祐子さんが担当。資材を捨てることなくリユースし、構造をアップデートさせて活用しています。輸送費や手間暇といった具体的な問題を一つひとつ解決しながら、コンセプトとストーリーが引き継がれている当館は、未来へと繋いでいくための女性らしいしなやかさとたくましさこそが、これから物事を作り出すときに必要なエネルギーの基本性質であると根本から訴えかけているようです。
2 シグネチャーゾーン

「EARTH MART」パビリオン
8つのパビリオンからなる「シグネチャーゾーン」では、メディアアーティストの落合陽一さんや慶応義塾大学教授の宮田裕章さんといった著名人をプロデューサーに迎え、哲学、伝統、共感、生命、概念、幅広い領域を様々な方法で表現しています。
「Better Co-Being」(Pr: 宮田裕章)は森の有機物が生成する自然共鳴体験を、建築事務所SANAAによるアート的な技法で美しく具現化しています。「いのち動的平衡館」(Pr: 福岡伸一)は分断する社会に対して、良い社会と未来を見直す哲学を展開。「いのちめぐる冒険」(Pr: 河森正治)では宇宙・海洋・大地に宿るつながりを再認識させ、「EARTH MART」(Pr: 小山薫堂)は地球環境や飢餓問題と向き合いながら、テクノロジーによる食の最先端を提示。伸縮する立方体に囲まれた「null2」(Pr: 落合陽一)は、存在と非存在、主体と環境の境界を融解させるというコンセプト。それぞれが様々な手法で自然との調和や、前提を覆すこと、物の本質を見極めるといった、日々の生活で隠れてしまいがちなメッセージを再認識させてくれます。
3 ブルーオーシャン・ドーム
提供:ZERI JAPAN(以下同)
特定非営利活動法人ZERI JAPANによる「BLUE OCEAN DOME」は、原研哉さんをプロデューサーに迎え「海の蘇生」をテーマに、水の惑星、地球が持つかけがえのない海洋を守るために意識変容を促す、未来のためのパビリオンです。二酸化炭素の固定やプラスチック汚染といった問題を描き出しながら、「地球」「宇宙」「生命」「環境」の環境モラルを捉え直します。展示は3つのドームで構成され、水の循環を体感するインスタレーション、海洋プラスチック問題を没入的に伝える球体LED、そして科学や哲学、芸術の対話が行われる「叡智のドーム」によって、多層的にサステナビリティを伝えています。
建築はサステナブル建築で有名な坂茂さんが担当。プラスチック海洋汚染の防止とプラスチックの適正活用を課題に、急速に再生可能な「国産竹」「紙管」「カーボンファイバー強化プラスチック(CFRP)」を構造材に用いた、軽量で高強度の世界初の建築を実現。地盤の弱い夢洲で大きな建物を建てるために必要とされるのが、深い杭の打ち込みですが、CFRPで軽量化することでそれが不要となったことは、技術だけでなく資材の面でもとても有意義なのだとか。
会期終了後は、モルディブに移設され、環境教育と海洋保全の拠点として活用されるそうです。構想から素材、展示、そしてその後の活用に至るまで、ドーム全体が循環的な未来のあり方を体現しています。
4. 森になる建築
photo by Yosuke Ohtake
植物由来の樹脂でつくった世界最大の3Dプリント建築としてギネス世界記録™に認定された「森になる建築」は、使用後に廃棄されるのではなく、“森になる”未来までを見据えて設計されています。「動物の巣が役目を終えたあと土に還る」という発想をもとにした、ぽってりと愛らしい形状は、巣や種、果実などの自然物を想起させ、森の風景に自然と溶け込む佇まいです。
この建築の構造体には、木材由来の生分解性素材「酢酸セルロース樹脂」が単一で使用され、3Dプリンタによって現地で約3週間かけて出力されました。外装には、一般参加型のワークショップで制作した植物の種を漉き込んだ和紙「Seeds Paper」や、福祉施設の方々や伝統工芸の和紙職人の制作による手漉きの紙が用いられています。時間の経過とともに種が芽吹き、四季を感じる日本の風景に新たな彩りを加えながら、使用後は自然に還ることができます。修復もしやすく、循環型デザインとしての魅力が随所に込められています。
酢酸セルロース樹脂の透明性を活かした設計のため、空間全体にやわらかな自然光が差し込み、揺らぎと静けさがもたらされています。内部をぐるりと囲むベンチは、地中に通したパイプを経由して取り込まれた冷気や、ベンチの中に入れた製氷時の端材の氷によって、涼しく保たれる仕組みに。徹底した循環システムと、光・風・植物の気配を五感で体感できる空間はまさに、人と自然との調和を体現していました。窮屈さを感じさせることなく、心地よい距離感と包まれるような安心感が漂う休憩所は、未来へと続く美しい時間に満ちていました。
5. 大屋根リング

パビリオン群を一望でき、夕暮れには幻想的な風景が広がるグランドリングを歩くと、まるで世界を旅しているような感覚とともに、私たちは皆、地球という場所を共有するひとつの家族なのだという感覚が呼び起こされます。会場全体をぐるりと囲む約2kmの巨大な大屋根リングは、大阪・関西万博のシンボルとして、建築家・藤本壮介さんが設計。人と自然、人と人のつながりを可視化し「多様でありながら、ひとつ」をテーマにしています。
©Expo 2025
世界最大の木造建築物として、ギネス世界記録に認定された大屋根リングは、日本の建築技術が主構造に採用されています。清水寺の舞台を支える部分にみられるように「貫(ぬき)の構造」とは、日本の伝統的な建築手法。それを、現代の建築基準法に合わせて、金属製の特殊くさびで再解釈したのだそうです。おかげで視線が遮られることなく、開放的な空間に仕上げられています。また、柱と柱の間隔を3.6m置くことで、ゆとりのある構造に仕上がっています。約70%は国産の杉とヒノキを使用しており、日本の森林資材の有効活用への思いが詰まっているのだとか。
この大屋根リングと呼応するのが、万博のコアとも言える中央に鎮座した「静けさの森」です。大阪府内の公園などから間伐予定の樹木を移植して、新たな生態系が作り出されています。約2.3haのエリアには、レアンドロ・エルリッヒやステファノ・マンクーゾといったアーティストの作品が点在。それぞれが作品を通して訴えかけるさまざまなメタファーが、観るものに新たな視座を与えてくれます。会期中、木々が成長するにつれて、埋立地であった土地に新しく多様な生命活動が育まれていきます。何十億年と重ねられてきた自然の営みは、底しれない生命力やデータベース、情報伝達能力を蓄えており、その膨大なデータベースや能力の前では、人間の営みがいかに脆弱であるかを問いかけます。誰もが立ち入る事のできるこの森こそが、万博全体のメッセージとなり、自然の一部である人間が選ぶべき未来への選択肢を提示してくれるようです。
人工物と自然物が交わり合う全体の会場設計には「自然と調和しながら共生していく社会」という未来のヴィジョンが反映されています。第一線で活躍する様々な人が関わり、形となった大阪・関西万博は、ヴィジョナリーであるだけでなく、作り上げる中でより良き未来の在り方が紡がれていく貴重なきっかけであり、プロセスであるーーそんなことを感じさせるものになっていました。
Öffen Journal Editorial Team
text: YUKA SONE SATO (LITTLE LIGHTS)
2025年の一大イベント、大阪・関西万博には行かれましたか? 2030年の達成を目標としたSDGsを5年後に控え「いのち輝く未来をデザインする」場として、世界の国々と未来への価値観を共有しています。宇宙や太陽、大地という重要な繋がりを共有する地球では、様々な国々が文化的な美しさを持ちながら、改良されるべき問題点をたくさん抱えています。これらを平和的に解決するために必要なのが、技術革新や共通概念、そしてコミュニケーションの力。中でも、iPS細胞をはじめとした科学技術を駆使して、生活に密接した未来の暮らしのアイデアを提案する大阪ヘルスケアパビリオンは話題となりました。そんな人気パビリオンのアテンダントユニフォームシューズに、私達オッフェンのシューズが採用されました。
未来への革新と多様化を示す大阪ヘルスケアパビリオンのユニフォームは、水や自然との調和を感じさせるグラデーションカラーと、やわらかな曲線を取り入れたデザインで構成されています。季節や体調に合わせてベスト・長袖・半袖を自由に組み合わせられる仕様で、機能性と美しさを兼ね備えています。
オッフェンのシューズも、そんなユニフォームの世界観に共鳴する一足として採用いただきました。上品で洗練されたフォルムに加え、長時間の着用にも対応する軽さとフィット感が評価され、実際に着用されたスタッフの方々からも「一日中履いていても本当に疲れにくい」とのお声をいただいています。未来と向き合う現場にふさわしい、心地よさと意志をあわせ持ったシューズとして、選んでいただきました。
大阪ヘルスケアパビリオンのテーマは「REBORN(再生)」。曲線的な広がりのある室内は、生命の再生と進化を象徴し、細胞分裂を模した光と音のインタラクティブ空間が広がります。また、パビリオンの設計を手掛けた東畑建築事務所によると、建築そのものも「再生」をテーマに据え、環境と共生する循環システムが随所に組み込まれているとか。魚の養殖と植物の水耕栽培を組み合わせた循環型農業の採用や、バイオマス由来の燃料電池の使用など、展示全体を通じて、未来の暮らしにおける「命」「資源」「エネルギー」のつながりを体感することができます。
編集部厳選! 注目のサステナパビリオンを5つご紹介
世界の国々や企業が、それぞれの視点で表現した「持続可能性」が一同に介した大阪・関西万博。コンセプトや展示内容だけでなく、建築や資材においてもサステナビリティへのこだわりや最新技術、各国の文化を取り入れた建築表現の自由さもとても魅力でした。今回は、特に秀逸だと感じた展示を、Öffenエディトリアルチームが独断と偏見で選び、魅力をご紹介します。
1 ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier

Victor Picon ©Cartier
カルティエが内閣府、経済産業省、博覧会協会と共同出展するウーマンズ パビリオンは、すべての人々が平等で尊重し、歩み、能力を発揮できる世界へのきっかけを生み出すことを目指しています。
パビリオンではまず、自分の名前を録音するところから始まります。そして、小説家やアクティビストとして活躍中の女性達の半生を表すトンネルを通ることで、女性たちの視点を疑似体験します。自然光が差し込む仄暗い空間に抜けると、枯山水のような静けさの中へ。そこでは、これまで訪れた人たちの名前が膨大な波のようにヘッドフォンを通り抜け、聴覚を通じて女性一人ひとりの存在が浮き上がるのを感じることができます。その後、女性であるがゆえの困難や不平等を数値化したパネルや、エンパワーメントやレンジリエンスのメッセージが浮かび上がる装置を使ったインタラクティブな仕掛けにより、強いメッセージが心に刻まれていきます。テクノロジーと自然や静寂が融合した体験は、女性視点へと優しく導き、心の奥底と社会システムへとそっと訴えかけます。
ドバイ万博の「ウーマンズ パビリオン」の意思を受け継いだ当パビリオンの設計は、同じくドバイにて日本館の建築に携わった永山祐子さんが担当。資材を捨てることなくリユースし、構造をアップデートさせて活用しています。輸送費や手間暇といった具体的な問題を一つひとつ解決しながら、コンセプトとストーリーが引き継がれている当館は、未来へと繋いでいくための女性らしいしなやかさとたくましさこそが、これから物事を作り出すときに必要なエネルギーの基本性質であると根本から訴えかけているようです。
2 シグネチャーゾーン
「EARTH MART」パビリオン
8つのパビリオンからなる「シグネチャーゾーン」では、メディアアーティストの落合陽一さんや慶応義塾大学教授の宮田裕章さんといった著名人をプロデューサーに迎え、哲学、伝統、共感、生命、概念、幅広い領域を様々な方法で表現しています。
「Better Co-Being」(Pr: 宮田裕章)は森の有機物が生成する自然共鳴体験を、建築事務所SANAAによるアート的な技法で美しく具現化しています。「いのち動的平衡館」(Pr: 福岡伸一)は分断する社会に対して、良い社会と未来を見直す哲学を展開。「いのちめぐる冒険」(Pr: 河森正治)では宇宙・海洋・大地に宿るつながりを再認識させ、「EARTH MART」(Pr: 小山薫堂)は地球環境や飢餓問題と向き合いながら、テクノロジーによる食の最先端を提示。伸縮する立方体に囲まれた「null2」(Pr: 落合陽一)は、存在と非存在、主体と環境の境界を融解させるというコンセプト。それぞれが様々な手法で自然との調和や、前提を覆すこと、物の本質を見極めるといった、日々の生活で隠れてしまいがちなメッセージを再認識させてくれます。
3 ブルーオーシャン・ドーム

提供:ZERI JAPAN(以下同)
特定非営利活動法人ZERI JAPANによる「BLUE OCEAN DOME」は、原研哉さんをプロデューサーに迎え「海の蘇生」をテーマに、水の惑星、地球が持つかけがえのない海洋を守るために意識変容を促す、未来のためのパビリオンです。二酸化炭素の固定やプラスチック汚染といった問題を描き出しながら、「地球」「宇宙」「生命」「環境」の環境モラルを捉え直します。展示は3つのドームで構成され、水の循環を体感するインスタレーション、海洋プラスチック問題を没入的に伝える球体LED、そして科学や哲学、芸術の対話が行われる「叡智のドーム」によって、多層的にサステナビリティを伝えています。
建築はサステナブル建築で有名な坂茂さんが担当。プラスチック海洋汚染の防止とプラスチックの適正活用を課題に、急速に再生可能な「国産竹」「紙管」「カーボンファイバー強化プラスチック(CFRP)」を構造材に用いた、軽量で高強度の世界初の建築を実現。地盤の弱い夢洲で大きな建物を建てるために必要とされるのが、深い杭の打ち込みですが、CFRPで軽量化することでそれが不要となったことは、技術だけでなく資材の面でもとても有意義なのだとか。
会期終了後は、モルディブに移設され、環境教育と海洋保全の拠点として活用されるそうです。構想から素材、展示、そしてその後の活用に至るまで、ドーム全体が循環的な未来のあり方を体現しています。
4. 森になる建築

photo by Yosuke Ohtake
植物由来の樹脂でつくった世界最大の3Dプリント建築としてギネス世界記録™に認定された「森になる建築」は、使用後に廃棄されるのではなく、“森になる”未来までを見据えて設計されています。「動物の巣が役目を終えたあと土に還る」という発想をもとにした、ぽってりと愛らしい形状は、巣や種、果実などの自然物を想起させ、森の風景に自然と溶け込む佇まいです。
この建築の構造体には、木材由来の生分解性素材「酢酸セルロース樹脂」が単一で使用され、3Dプリンタによって現地で約3週間かけて出力されました。外装には、一般参加型のワークショップで制作した植物の種を漉き込んだ和紙「Seeds Paper」や、福祉施設の方々や伝統工芸の和紙職人の制作による手漉きの紙が用いられています。時間の経過とともに種が芽吹き、四季を感じる日本の風景に新たな彩りを加えながら、使用後は自然に還ることができます。修復もしやすく、循環型デザインとしての魅力が随所に込められています。
酢酸セルロース樹脂の透明性を活かした設計のため、空間全体にやわらかな自然光が差し込み、揺らぎと静けさがもたらされています。内部をぐるりと囲むベンチは、地中に通したパイプを経由して取り込まれた冷気や、ベンチの中に入れた製氷時の端材の氷によって、涼しく保たれる仕組みに。徹底した循環システムと、光・風・植物の気配を五感で体感できる空間はまさに、人と自然との調和を体現していました。窮屈さを感じさせることなく、心地よい距離感と包まれるような安心感が漂う休憩所は、未来へと続く美しい時間に満ちていました。
5. 大屋根リング
パビリオン群を一望でき、夕暮れには幻想的な風景が広がるグランドリングを歩くと、まるで世界を旅しているような感覚とともに、私たちは皆、地球という場所を共有するひとつの家族なのだという感覚が呼び起こされます。会場全体をぐるりと囲む約2kmの巨大な大屋根リングは、大阪・関西万博のシンボルとして、建築家・藤本壮介さんが設計。人と自然、人と人のつながりを可視化し「多様でありながら、ひとつ」をテーマにしています。

©Expo 2025
世界最大の木造建築物として、ギネス世界記録に認定された大屋根リングは、日本の建築技術が主構造に採用されています。清水寺の舞台を支える部分にみられるように「貫(ぬき)の構造」とは、日本の伝統的な建築手法。それを、現代の建築基準法に合わせて、金属製の特殊くさびで再解釈したのだそうです。おかげで視線が遮られることなく、開放的な空間に仕上げられています。また、柱と柱の間隔を3.6m置くことで、ゆとりのある構造に仕上がっています。約70%は国産の杉とヒノキを使用しており、日本の森林資材の有効活用への思いが詰まっているのだとか。
この大屋根リングと呼応するのが、万博のコアとも言える中央に鎮座した「静けさの森」です。大阪府内の公園などから間伐予定の樹木を移植して、新たな生態系が作り出されています。約2.3haのエリアには、レアンドロ・エルリッヒやステファノ・マンクーゾといったアーティストの作品が点在。それぞれが作品を通して訴えかけるさまざまなメタファーが、観るものに新たな視座を与えてくれます。会期中、木々が成長するにつれて、埋立地であった土地に新しく多様な生命活動が育まれていきます。何十億年と重ねられてきた自然の営みは、底しれない生命力やデータベース、情報伝達能力を蓄えており、その膨大なデータベースや能力の前では、人間の営みがいかに脆弱であるかを問いかけます。誰もが立ち入る事のできるこの森こそが、万博全体のメッセージとなり、自然の一部である人間が選ぶべき未来への選択肢を提示してくれるようです。
人工物と自然物が交わり合う全体の会場設計には「自然と調和しながら共生していく社会」という未来のヴィジョンが反映されています。第一線で活躍する様々な人が関わり、形となった大阪・関西万博は、ヴィジョナリーであるだけでなく、作り上げる中でより良き未来の在り方が紡がれていく貴重なきっかけであり、プロセスであるーーそんなことを感じさせるものになっていました。
Öffen Journal Editorial Team
text: YUKA SONE SATO (LITTLE LIGHTS)