障がいのある方々の就労を支援。オッフェンの物流を担う三倉倉庫さんとともに広げる、社会の可能性

障がいのある方々の就労を支援。オッフェンの物流を担う三倉倉庫さんとともに広げる、社会の可能性
就労継続支援とは、障がいや病気などの理由で一般企業での就労が難しい方に、働く機会を提供する福祉サービスです。事業所は単なる作業場ではなく、利用者が社会との接点を持ち、自信を取り戻しながら次のステップへ進むための“入口”を担っています。
オッフェンの物流を神戸で支える三倉倉庫は、このサービスを通してより多くの方に就労の機会を与えています。働くことは心身の回復や生活リズムの再構築につながり、孤立の予防にもつながります。包括的な地域づくりにとって素晴らしい仕組みでありながら、その実態は現在、様々な課題に溢れているといいます。オッフェンの物流を支える三倉倉庫 代表取締役の谷山貴彦さんにお話を伺いました。
――まず、事業所の概要について教えていただけますか?
私たちの事業所では、障がいのある方を38名雇用しています。オッフェンさんのお仕事には、障がいのあるスタッフが活躍できる作業が本当にたくさんあります。
例えば、店舗やポップアップなどの催事から返ってきた靴の袋には、中にタグが入り込んだ状態になっていることがあります。これを再度倉庫で管理する際には、タグを外に出しておく必要があります。こうした細かな作業の積み重ねで、作業効率が向上します。
――集中力や丁寧さを活かせる作業を得意とされる方が多い印象でしょうか?
そうですね。できることの幅は本当に広いんです。障がいの有無にかかわらず、作業の得手不得手は人それぞれです。
タグ出しの作業を根気よく繰り返すのが得意な方もいますし、インソールを右足用・左足用に分けて10枚ずつ束ねるといった作業が得意な方もいます。オッフェンさんのお仕事の中には、障がいのあるスタッフが活躍できる場所が本当にたくさんあって、そういう意味でも素晴らしい関係性を築けていると感じています。
――オッフェンが特に障がいのある方でも携わりやすいのはなぜですか?
オッフェンさんが大切にしているゼロウェイストをはじめとした社会に対する考え、そして、靴箱がないなどの独自の管理方法が、アナログな倉庫運営とも高い親和性があるからだと思います。
オッフェンさんのスタートと同時期に企業向けの倉庫事業を始めたのですが、当時の物流は、システム化されて自動で動くイメージが強かったんです。一から倉庫を作り、障がいのある方々を雇用する体制に、最初はとても驚かれました。でも、プロデューサーの日坂さんも店舗ですごくアナログに働いていらっしゃるので、相性がいいのかもしれないですね。
自動化の時代だからこそ、アナログな働き方の価値を
――物流業界の自動化は、障がい者雇用にはどのような影響がありますか?
私たちの事業所が立ち上がって10年になりますが、この間に物流倉庫の自動化は急速に進みました。特に大手の物流倉庫などでは、どんどん人の役割が変化し、活躍の場が縮小しているのが現実です。これは物流に限らず、定型的な業務全般で起きていて、障がいのある方々の働く場が減少傾向です。
障がいと一言で言っても、身体に不自由がある方もいれば、精神障がいや知的障がいによって、集中や継続が難しい方もいます。後者のような方々には、反復的な作業でも「自分にもできる」と感じられることで自信となって精神的な支えになり、継続する力につながるんです。でも、そういった仕事自体が今、根本的に少なくなっています。
――そうした中で、アナログな働き方の価値をどうお考えですか?
AIや自動化によって人の役割が変化する時代が来るのは事実だと思います。でも、アナログにはアナログの良さがあって、そこから人のつながりが生まれたり、思いが広がっていったりする。実際に体を動かしてみないと分からないことってたくさんあるんです。
オッフェンの皆さんもどちらかというとアナログ派で、すごくフットワークが軽いですよね。ブランドのスタート地点では、とにかく失敗できない。そのためにはまず自分たちの足で動く。そうやって現場でマンパワーを出しながら、意見を出し合い、チームとして動いていく。そうした積み重ねが、5年後、10年後のスマートな形につながっていくのだと思います。

――従業員それぞれに、特別な気配りをしているということも?
ありますね。皆さん本当にユニークですよ。すごく仕事ができる方でも、30分の作業後に10分の休憩が必要な方もいます。仕事の得手不得手だけでなく、時間の使い方の得手不得手もある。精神障がいのある方だと、季節やその場のムードにメンタルが左右されて、予期せず1か月お休みすることもあります。
今でこそ、一人ひとりの日々の様子を記録したファイルを見ながら、「こういう特性があるんだな」と理解を深められるようになりましたが、最初の頃は本当に手探り状態でした。
――手探り状態から、どのようなやり方を確立したのでしょう?
やはり、一連の業務を一周経験してたどり着いたのが、作業をできるだけ標準化・細分化することです。一つの作業に集中できる環境を整えることが、一人ひとりにとって最も大切なんです。
――オッフェンの作業行程はどのように細分化されているのですか?
例えば、インソールは最初、右足用も左足用も混在した状態で工場から届きます。まず、それを「右と左に分けてね」とお願いする人。次に、分けられたものの中から「右を10枚ずつ束ねてね」「左を10枚ずつ束ねてね」とお願いする人。そして最後に、それを合体させて輪ゴムで留める人。この一連の流れで4名が必要になります。
ここまで細分化した方がスムーズに進みますし、それでも数が9枚になったり8枚になったりすることはあるんですね。そこは障がいのないスタッフが最終確認をして、「1枚少なかったよ。次はどうしたら正確に数えられるかな?」と一緒に考える。常にそういう会話を重ねながら進めて、最終的に左右それぞれ10枚を輪ゴムでセットした状態で、袋に入れて納品しています。
――そのチームプレイは、他の場面でも活かされるのですか?
ええ。特にポップアップなどの催事から戻ってきた風呂敷タオルやインソールを整理するときも、全く同じように活かされます。期間限定の店舗は、どうしても撤収作業が時間との戦いになりますので、インソールが右も左も、時にはメンズとウィメンズまで混在した状態で返ってきます。
でも、現場の大変さが分かっているから、それはやむを得ません。そこからが、また私たちの出番なんです。先ほどと同じように、仕分け、分類、カウント、セットアップという流れで、みんなで手分けして元のきれいな状態に戻していきます。
――オッフェンに関わる全員がひとつのチームなのですね。無機質にモノを投げて「誰かがやってくれる」というスタンスではなく、背景にいる人の存在を想像することができれば、扱い方も、仕事に対する愛情も変わってくるんじゃないかなと思います。
そう思っていただけると、本当に嬉しいです。ポップアップショップの設営や搬出も、最初の頃から何度かお手伝いさせていただいていますが、約1時間で全てを完了させる必要があります。F1のピット作業のような状況です。
そういう現場を見ると、それぞれの持ち場でみんなが頑張っていることがよく分かります。陥りがちなのが、「自分だけがしんどい」「現場が一番大変だ」と思ってしまうこと。でも、体を動かす大変さもあれば、ゼロから物事を考える難しさもある。みんなが「どうすれば良くなるか」を考えて必死にやっている。その前提に立てば、「そりゃ現場も大変だよね、こっちも大変だよね」と思いやれるはずなんです。
私たちの仕事は、単に商品を扱うだけでなく、障がいのあるスタッフの自立にどう寄り添うかという挑戦でもあります。オッフェンさんとのお仕事は、その挑戦の中で、社会とつながるための本当に大切な役割を担ってくれているんです。
これはオッフェンさんとのお仕事に限らず、障がいのある方々の自立にどう寄り添っていけるか、という大きな課題にもつながります。法定雇用率は引き上げられていますが、現実としてはその雇用率をクリアしている企業数は十分とは言えません。障がいの種類、程度によるところもありますが、それだけ障がいのある方の雇用は多面的な課題であり、丁寧な理解と工夫が求められるテーマだと思います。
私たちも福祉事業として持続可能な形を目指しています。障がいのある方の自立を支え続けるためには、知恵を絞り続けないといけません。オッフェンさんとのお仕事は、その大きな挑戦の中で、本当に重要な役割を担ってくれています。まだまだこれからですが、もっともっと色々な形でお役に立てればと思っています。

Tシャツ一枚に込めた「人が繋がる」物語
――ご自身のTシャツブランドも立ち上げられています。きっかけを教えていただけますか?
もともと障がいのある方が関われる仕事についてずっと考えていたのですが、2年半ほど前に突然、難病指定されている腎臓の病気を発症しました。1ヶ月の入院後、退院してもすぐに再発するということを3回繰り返し、半年で3ヶ月は入院しているような状態でした。
完治しない病気で、いつ再発するかわからない。僕が営業に行けなくても成り立つ仕組みが必要だと痛感しました。そんな時、シルクスクリーンプリントの職人である知人に相談したところ、「1枚からでも作ってあげるからやってみなよ」と背中を押してくれたんです。版の作り方から仕入れ先まで全て教えてくれて「もう、やれ」と。それが直接のきっかけですね。
――どのようなチームで取り組んでいるんですか?
同じく難病と闘っている後輩と一緒にやっています。彼も筋肉が壊死していく病気で働けなくなったのですが、デザインにトライしてみないかと声をかけました。僕も彼も、同じように病気と向き合っているからこそ、作るものにはそうした想いを込めています。
――どのようなメッセージがデザインに込められているのでしょうか?
テーマは「ポジティブを発信する」ことです。手に取った人の気分が上がったり、前向きになれたりするようなものを作りたいと思っています。
例えば、今、日坂さんが着てくださっているTシャツは、靴のパーツ(アッパー、インソール、ヒールなど)を分解したデザインです。これを全部足すと一足の靴が完成する、という遊び心です。街で靴職人さんが見たら「なんだあれは?」って思うかもしれないですよね。
他にも、血液検査の項目をずらっと並べたデザインもあります。一見すると何のデザインかわかりませんが、僕自身の経験から「体を大切にしようぜ」というメッセージを込めています。どんなものでも、少しワクワクするような、気持ちが上がるようなデザインを心がけています。
――どんどん広がりそうなポテンシャルを感じます!
最近、嬉しい繋がりも生まれました。車いすを利用し、ソロキャンプをしている方から「僕にTシャツを提供してくれませんか」と連絡があったんです。すごく面白い活動をされているので、ぜひ着てほしいと思い、お送りすることにしました。こうして活動を通じて、前向きな人たちと繋がっていけるのは本当に嬉しいですね。
――様々な活動を通して、人と繋がることや継続していく上で大切にされていることは何ですか?
「やらない善より、やる偽善」という言葉がありますが、どんなに良いアイデアでも行動を起こさなければ意味がないと思っています。私たちの活動も、まずは小さなアクションから始まりました。想いを伝える努力をやめずに、少しずつ前に進むことで、輪は着実に広がっていく。急激に大きくなるのではなく、長く「続けていく」ことが何より難しいし、一番大事なことだと感じています。
実はお遊びで10年ほど前から、毎年12月30日に同級生たちと仮装をして、地元の川を3本、走りながら掃除しています。「どうせなら楽しいことをしよう」と始まったただのノリですが、続いています。自分たちが楽しんで、ついでに街が綺麗になれば最高だよね、というスタンスでやっています。
僕自身、闘病中に多くの人に支えてもらいましたし、活動を通じて新たな繋がりも生まれています。人が繋がっていくことのありがたさを、常に感じています。
🔗谷山さんのTシャツブランド「TP United™︎」はこちらから
🔗 instagramアカウント @tp_united.official
Öffen Journal Editorial Team
text: YUKA SONE SATO (LITTLE LIGHTS)

障がいのある方々の就労を支援。オッフェンの物流を担う三倉倉庫さんとともに広げる、社会の可能性
就労継続支援とは、障がいや病気などの理由で一般企業での就労が難しい方に、働く機会を提供する福祉サービスです。事業所は単なる作業場ではなく、利用者が社会との接点を持ち、自信を取り戻しながら次のステップへ進むための“入口”を担っています。
オッフェンの物流を神戸で支える三倉倉庫は、このサービスを通してより多くの方に就労の機会を与えています。働くことは心身の回復や生活リズムの再構築につながり、孤立の予防にもつながります。包括的な地域づくりにとって素晴らしい仕組みでありながら、その実態は現在、様々な課題に溢れているといいます。オッフェンの物流を支える三倉倉庫 代表取締役の谷山貴彦さんにお話を伺いました。
――まず、事業所の概要について教えていただけますか?
私たちの事業所では、障がいのある方を38名雇用しています。オッフェンさんのお仕事には、障がいのあるスタッフが活躍できる作業が本当にたくさんあります。
例えば、店舗やポップアップなどの催事から返ってきた靴の袋には、中にタグが入り込んだ状態になっていることがあります。これを再度倉庫で管理する際には、タグを外に出しておく必要があります。こうした細かな作業の積み重ねで、作業効率が向上します。
――集中力や丁寧さを活かせる作業を得意とされる方が多い印象でしょうか?
そうですね。できることの幅は本当に広いんです。障がいの有無にかかわらず、作業の得手不得手は人それぞれです。
タグ出しの作業を根気よく繰り返すのが得意な方もいますし、インソールを右足用・左足用に分けて10枚ずつ束ねるといった作業が得意な方もいます。オッフェンさんのお仕事の中には、障がいのあるスタッフが活躍できる場所が本当にたくさんあって、そういう意味でも素晴らしい関係性を築けていると感じています。
――オッフェンが特に障がいのある方でも携わりやすいのはなぜですか?
オッフェンさんが大切にしているゼロウェイストをはじめとした社会に対する考え、そして、靴箱がないなどの独自の管理方法が、アナログな倉庫運営とも高い親和性があるからだと思います。
オッフェンさんのスタートと同時期に企業向けの倉庫事業を始めたのですが、当時の物流は、システム化されて自動で動くイメージが強かったんです。一から倉庫を作り、障がいのある方々を雇用する体制に、最初はとても驚かれました。でも、プロデューサーの日坂さんも店舗ですごくアナログに働いていらっしゃるので、相性がいいのかもしれないですね。
自動化の時代だからこそ、アナログな働き方の価値を
――物流業界の自動化は、障がい者雇用にはどのような影響がありますか?
私たちの事業所が立ち上がって10年になりますが、この間に物流倉庫の自動化は急速に進みました。特に大手の物流倉庫などでは、どんどん人の役割が変化し、活躍の場が縮小しているのが現実です。これは物流に限らず、定型的な業務全般で起きていて、障がいのある方々の働く場が減少傾向です。
障がいと一言で言っても、身体に不自由がある方もいれば、精神障がいや知的障がいによって、集中や継続が難しい方もいます。後者のような方々には、反復的な作業でも「自分にもできる」と感じられることで自信となって精神的な支えになり、継続する力につながるんです。でも、そういった仕事自体が今、根本的に少なくなっています。
――そうした中で、アナログな働き方の価値をどうお考えですか?
AIや自動化によって人の役割が変化する時代が来るのは事実だと思います。でも、アナログにはアナログの良さがあって、そこから人のつながりが生まれたり、思いが広がっていったりする。実際に体を動かしてみないと分からないことってたくさんあるんです。
オッフェンの皆さんもどちらかというとアナログ派で、すごくフットワークが軽いですよね。ブランドのスタート地点では、とにかく失敗できない。そのためにはまず自分たちの足で動く。そうやって現場でマンパワーを出しながら、意見を出し合い、チームとして動いていく。そうした積み重ねが、5年後、10年後のスマートな形につながっていくのだと思います。

――従業員それぞれに、特別な気配りをしているということも?
ありますね。皆さん本当にユニークですよ。すごく仕事ができる方でも、30分の作業後に10分の休憩が必要な方もいます。仕事の得手不得手だけでなく、時間の使い方の得手不得手もある。精神障がいのある方だと、季節やその場のムードにメンタルが左右されて、予期せず1か月お休みすることもあります。
今でこそ、一人ひとりの日々の様子を記録したファイルを見ながら、「こういう特性があるんだな」と理解を深められるようになりましたが、最初の頃は本当に手探り状態でした。
――手探り状態から、どのようなやり方を確立したのでしょう?
やはり、一連の業務を一周経験してたどり着いたのが、作業をできるだけ標準化・細分化することです。一つの作業に集中できる環境を整えることが、一人ひとりにとって最も大切なんです。
――オッフェンの作業行程はどのように細分化されているのですか?
例えば、インソールは最初、右足用も左足用も混在した状態で工場から届きます。まず、それを「右と左に分けてね」とお願いする人。次に、分けられたものの中から「右を10枚ずつ束ねてね」「左を10枚ずつ束ねてね」とお願いする人。そして最後に、それを合体させて輪ゴムで留める人。この一連の流れで4名が必要になります。
ここまで細分化した方がスムーズに進みますし、それでも数が9枚になったり8枚になったりすることはあるんですね。そこは障がいのないスタッフが最終確認をして、「1枚少なかったよ。次はどうしたら正確に数えられるかな?」と一緒に考える。常にそういう会話を重ねながら進めて、最終的に左右それぞれ10枚を輪ゴムでセットした状態で、袋に入れて納品しています。
――そのチームプレイは、他の場面でも活かされるのですか?
ええ。特にポップアップなどの催事から戻ってきた風呂敷タオルやインソールを整理するときも、全く同じように活かされます。期間限定の店舗は、どうしても撤収作業が時間との戦いになりますので、インソールが右も左も、時にはメンズとウィメンズまで混在した状態で返ってきます。
でも、現場の大変さが分かっているから、それはやむを得ません。そこからが、また私たちの出番なんです。先ほどと同じように、仕分け、分類、カウント、セットアップという流れで、みんなで手分けして元のきれいな状態に戻していきます。
――オッフェンに関わる全員がひとつのチームなのですね。無機質にモノを投げて「誰かがやってくれる」というスタンスではなく、背景にいる人の存在を想像することができれば、扱い方も、仕事に対する愛情も変わってくるんじゃないかなと思います。
そう思っていただけると、本当に嬉しいです。ポップアップショップの設営や搬出も、最初の頃から何度かお手伝いさせていただいていますが、約1時間で全てを完了させる必要があります。F1のピット作業のような状況です。
そういう現場を見ると、それぞれの持ち場でみんなが頑張っていることがよく分かります。陥りがちなのが、「自分だけがしんどい」「現場が一番大変だ」と思ってしまうこと。でも、体を動かす大変さもあれば、ゼロから物事を考える難しさもある。みんなが「どうすれば良くなるか」を考えて必死にやっている。その前提に立てば、「そりゃ現場も大変だよね、こっちも大変だよね」と思いやれるはずなんです。
私たちの仕事は、単に商品を扱うだけでなく、障がいのあるスタッフの自立にどう寄り添うかという挑戦でもあります。オッフェンさんとのお仕事は、その挑戦の中で、社会とつながるための本当に大切な役割を担ってくれているんです。
これはオッフェンさんとのお仕事に限らず、障がいのある方々の自立にどう寄り添っていけるか、という大きな課題にもつながります。法定雇用率は引き上げられていますが、現実としてはその雇用率をクリアしている企業数は十分とは言えません。障がいの種類、程度によるところもありますが、それだけ障がいのある方の雇用は多面的な課題であり、丁寧な理解と工夫が求められるテーマだと思います。
私たちも福祉事業として持続可能な形を目指しています。障がいのある方の自立を支え続けるためには、知恵を絞り続けないといけません。オッフェンさんとのお仕事は、その大きな挑戦の中で、本当に重要な役割を担ってくれています。まだまだこれからですが、もっともっと色々な形でお役に立てればと思っています。

Tシャツ一枚に込めた「人が繋がる」物語
――ご自身のTシャツブランドも立ち上げられています。きっかけを教えていただけますか?
もともと障がいのある方が関われる仕事についてずっと考えていたのですが、2年半ほど前に突然、難病指定されている腎臓の病気を発症しました。1ヶ月の入院後、退院してもすぐに再発するということを3回繰り返し、半年で3ヶ月は入院しているような状態でした。
完治しない病気で、いつ再発するかわからない。僕が営業に行けなくても成り立つ仕組みが必要だと痛感しました。そんな時、シルクスクリーンプリントの職人である知人に相談したところ、「1枚からでも作ってあげるからやってみなよ」と背中を押してくれたんです。版の作り方から仕入れ先まで全て教えてくれて「もう、やれ」と。それが直接のきっかけですね。
――どのようなチームで取り組んでいるんですか?
同じく難病と闘っている後輩と一緒にやっています。彼も筋肉が壊死していく病気で働けなくなったのですが、デザインにトライしてみないかと声をかけました。僕も彼も、同じように病気と向き合っているからこそ、作るものにはそうした想いを込めています。
――どのようなメッセージがデザインに込められているのでしょうか?
テーマは「ポジティブを発信する」ことです。手に取った人の気分が上がったり、前向きになれたりするようなものを作りたいと思っています。
例えば、今、日坂さんが着てくださっているTシャツは、靴のパーツ(アッパー、インソール、ヒールなど)を分解したデザインです。これを全部足すと一足の靴が完成する、という遊び心です。街で靴職人さんが見たら「なんだあれは?」って思うかもしれないですよね。
他にも、血液検査の項目をずらっと並べたデザインもあります。一見すると何のデザインかわかりませんが、僕自身の経験から「体を大切にしようぜ」というメッセージを込めています。どんなものでも、少しワクワクするような、気持ちが上がるようなデザインを心がけています。
――どんどん広がりそうなポテンシャルを感じます!
最近、嬉しい繋がりも生まれました。車いすを利用し、ソロキャンプをしている方から「僕にTシャツを提供してくれませんか」と連絡があったんです。すごく面白い活動をされているので、ぜひ着てほしいと思い、お送りすることにしました。こうして活動を通じて、前向きな人たちと繋がっていけるのは本当に嬉しいですね。
――様々な活動を通して、人と繋がることや継続していく上で大切にされていることは何ですか?
「やらない善より、やる偽善」という言葉がありますが、どんなに良いアイデアでも行動を起こさなければ意味がないと思っています。私たちの活動も、まずは小さなアクションから始まりました。想いを伝える努力をやめずに、少しずつ前に進むことで、輪は着実に広がっていく。急激に大きくなるのではなく、長く「続けていく」ことが何より難しいし、一番大事なことだと感じています。
実はお遊びで10年ほど前から、毎年12月30日に同級生たちと仮装をして、地元の川を3本、走りながら掃除しています。「どうせなら楽しいことをしよう」と始まったただのノリですが、続いています。自分たちが楽しんで、ついでに街が綺麗になれば最高だよね、というスタンスでやっています。
僕自身、闘病中に多くの人に支えてもらいましたし、活動を通じて新たな繋がりも生まれています。人が繋がっていくことのありがたさを、常に感じています。
🔗谷山さんのTシャツブランド「TP United™︎」はこちらから
🔗 instagramアカウント @tp_united.official
Öffen Journal Editorial Team
text: YUKA SONE SATO (LITTLE LIGHTS)